無限に働く生活をやめるための「5つの視点」 「自ら考えて動ける人」になるための方法

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視点⑤ 考えても仕方がないことは考えない

考えて決断できるのであれば、徹底して考えるべきです。ですが、考えても仕方がないことは、考えないほうがはるかに合理的です。

時間は有限で、1日は24時間しかありません。時間を有効に使うには、取捨選択が必要になります。僕の取捨選択の基準は単純で、まず「好き、嫌い」です。何ごとも、好きなことなら長続きするからです。

考えないほうが合理的な理由

AとBの2択があって、どちらも同じくらい「好き」な場合は、「コインの裏表」で、選択肢が3択以上なら「あみだくじ」で決めます。情報を集め、期限を決めて考え、それでも結論が出ないときは、この方法がいちばん効率的です。なぜかと言えば、AとBについて情報を集め、集中して考えても結論が出ないのならば、AとBとの間にはそれほど差がないということ。どちらに決めても大した違いはないのです。

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考えたほうが早く正しく決断できるのであれば、徹底して考えたほうがいい。けれど、考えても仕方がないことは、考えないほうがむしろ合理的なのです。例えば、10年先、20年先、100年先のことなど誰にもわかりません。それはもう人智を超えたところにあるので、そんなことを考えても仕方がないと思います。

僕は、ダーウィニストですから、「将来何が起こるかは誰にもわからない。人間にできることは、運(適当なときに適当な場所にいること)と適応だけ」と心底思っています。わからないことをあれこれと詮索するよりも、過去の教材(歴史)を勉強するほうがはるかに性に合っています。そのほうが適応力が増すのではないでしょうか。

自分の想像や自分の力量を超える仕事を任されたとき、今までと同じやり方、今までと同じ考え方では、今までと同じ結果しか得ることができません。そのため、自分の頭で必死に考え、工夫をする知的生産が大切なのです。すると、自然と仕事にイノベーションが起きて、短時間で成果を出す働き方にもつながるはずです。ぜひ、自分の頭で考えた先の新しい世界を見てみてください。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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