100円業界のセリア、生き残る武器は「データ」 カリスマ社長の後継問題は一時棚上げだが…

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国内店舗数はダイソーが約3300、セリアは約1500で、大きな開きがあり、まだ競争のない地区が残る。今後セリアの店舗増によって、両社の競合エリアが増えるにしても、アイテム数がセリアの3倍以上で100円以上の品も多数取り扱うダイソーと、商品数を絞り込んでいるセリアとでは、必ずしも真正面からぶつからないだろう。

ダイソーは国内3200店以上、アイテム数7万以上を誇り、規模では断然トップだ(記者撮影)

「われわれはアイテム数が多く、他社にはない500坪~2000坪の大きい店も持てる。これが1つの差別化になっているし、出店のオファーも多い。海外も合わせると5300以上の店舗がある。この規模だからこそ、仕入れられる商品もある」(ダイソー)。

キャンドゥやワッツも状況を傍観しているわけではない。キャンドゥは直近2018年度に19店しか店舗を増やせなかった反省から、「契約内容を見直すなどしてフランチャイズ出店に相当力を入れる。まずは出店していかないと成長がない」(城戸一弥社長)と、規模拡大を第一優先に掲げる。専門の人材を採用するなどマーケティングにも力をいれ、2018年にはオタク向け商品のようなニッチながらも新たな需要発掘に成功した。

ワッツは店舗の改装に加え、300円や500円といった商品の拡充で、売上高増を狙う。スーパーマーケットの一角にある100円均一コーナーのような、レジ打ちなどをスーパー側に対応してもらう「委託型店舗」をワッツは得意としている。2018年度は出店の8割が委託型店舗で、人手がかからないためにテナント型店舗より利益率もいい。「5~10年先のことを考えたときに、これからも大型出店を継続的にやるかというと、うちの場合はそうでないと思う」と平岡社長は話す。

後継者問題は一時棚上げ、「私が働く」

もちろんセリアも盤石ではない。

「今の姿からすれば(株価下落は)やむをえないことだと思っている。反省点は私に油断があったこと。しばらく調子がよかったので、このままずっといけるんじゃないかなという気持ちがあった。私がいなくなったら誰がデータを扱うのか、という後継者問題を投資家に問われることも多かった。

人材育成の必要性を感じ、部下に仕事を任せるようにしたが期待したスピード感で成果が出ず、それが足元で成長が伸び悩んでいる理由だと思う。油断したり人任せにしたりせず、私自身がもっと懸命に働くべきだと、今は思っている」(河合社長)

業績の牽引役だったDIYグッズなどもブームが一巡しつつあり、これまでのような爆発的な伸びは期待しにくくなっている。既存店売上高が前年を割る月も増えた。

はたしてセリアの思惑通りライバルは淘汰されてしまうのか。頭一つ抜け出したセリアの一挙手一投足に注目が集まっている。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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