100円業界のセリア、生き残る武器は「データ」 カリスマ社長の後継問題は一時棚上げだが…
加えて業界では、人件費や家賃、運送費、システム投資などのコスト増が各社に追い打ちをかけている。セリアが1月31日に発表した第3四半期決算は、ギリギリ減益を避けられたものの、株価は下落基調にある。業界3、4番手のキャンドゥとワッツの2018年度決算も営業減益で終わり、この数年減益トレンドから抜け出せていない。
そんな中、足元は苦しくてもセリアが生き残れると自信を持つ根拠は、同社がデータの扱いに長けていることにある。
セリアは業界で先駆けて、2004年にPOSシステム、2006年にはPOSデータを基にした発注の支援システムを導入し、現在はほぼ100%自動的に発注が行われている。データに基づいた品ぞろえが店舗の売上高を伸ばすと同時に、それまで1日がかりだった発注の作業時間を30分程度にまで減らした。ちなみに、当時常務だった河合社長が独自に生み出したこのデータシステムは、今も社長自身が調整を手掛けている。
100%自動発注で1日分を30分に短縮
さらに2007年には雑貨店風の「カラー・ザ・デイズ」という新業態も開いた。既存の店舗とは違い、明るくおしゃれな店構えで、POSデータを基に商品数が絞り込まれた店内は広々。こうした努力を積み上げ、セリアの営業利益は10年前の7倍に成長した。結果的に、業界他社がPOS導入や明るくきれいな店づくりに追随するようになり、業界の同質化が加速している。
それでも上場3社の利益の差は広がるばかりだ。「まずデータ分析をして、その裏付けを基に店舗をきれいにするとか商品を変えるのが、本来の順番。POSを入れても、データを生かしたビジネスができないと、一見同質化した店に見えても、実際は(品ぞろえが)全然違うことになる」と河合社長は言い切る。
「この業界は価格競争がない。やっているのは、お客さんがほしい商品をいかにそろえているかという、目に見えない“価値”の競争。だからこそデータ分析の技術力が勝負。売上高が伸びているときは、たくさんお客さんが来ていろいろなものをバラバラに買っていくから、なんとなく全体が売れているように見えるけれど、誰も買わない商品は永遠に残る。この業界の本当の怖さは、売れなくなったときの在庫リスクにある」(河合社長)。
この技術力で、業界トップのダイソーにも競り勝てる、とセリアは考えているようだ。店舗数もアイテム数もケタ違いに多いダイソーは、「欠品で棚が空いていることが多い」(既出の不動産開発業者)など発注や在庫管理がまだ他社に比べて緩い、という声が聞こえてくる。
ダイソーもこの点は認識している。創業者である矢野博丈会長から次男の靖二氏へ、2018年3月に初の社長交代をして以降、仕入れから物流、売上のデータを一本化し、より早く情報を抽出・共有できるようにするなど、システムの再構築に大きく力を入れているという。また2012~2014年に設けた全国8カ所の物流倉庫を中心に、発注から店に商品が並ぶまでにかかる時間の短縮に取り組んだりと、欠品を減らそうとしている。
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