札幌地下鉄「日ハム移転」で乗客減少の危機 市交通局はJR北海道と協力関係を強化すべき

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一方、東豊線は札幌市交通局地下鉄3線の中で唯一営業損失にあるものの、1日乗車人員は開業以来一部の年度を除いてほぼ一貫して増加して、2016年度の1日乗車人員は15万2136人を記録し、3線の中でもこれからのさらなる成長が期待される路線であったと言える。

しかし、これまで成長基調にあった東豊線にも大きな課題が立ちはだかることとなった。北海道日本ハムファイターズが北広島市に建設するボールパークへの本拠地移転を正式に決定したことで、東豊線の利用が減る可能性が出てきたからだ。

日ハムは現在、東豊線福住駅が最寄りの札幌ドームを本拠地としている。東豊線利用者のうち、日ハムの試合観戦のため札幌ドームへ向かう利用者の割合は約2.1%で、仮に日ハムの試合がなくなった場合は約2億円の減収が見込まれるという。

日ハムの北広島移転は東豊線の減収につながりかねず、移転後のさらなる利用促進が課題になりそうだ。また、札幌市交通局の中でも、2016年度に営業損失4.9億円超を計上した軌道(路面電車)の経営改善も課題である。

一層の収益確保が課題

そして、現在は人口増を続けている札幌市であるが、将来の人口減少を見据え、札幌市交通局にとって一層の収益確保が重要になる。人口減少が進展する中、北海道の鉄道事業を取り巻く環境はさらに厳しさを増しそうだが、それは200万人弱の人口が集中する札幌市であっても例外ではない。

駅ナカ店舗などの関連事業とともに、民間不動産会社への出資による沿線開発の促進による開発利益と地下鉄利用増を同時に追求する取り組みなどを検討できないだろうか。

また、若いうちから公共交通の存在を意識付けるために、幼稚園・保育園などで出前授業を実施することも検討に値する。

そして、鉄道を活性化させるための鍵はマイカーからの鉄軌道への利用の転移を促進し、札幌市および周辺都市を含む地域住民の鉄軌道の乗車人員の維持を図ることなどを通して、鉄軌道の利用割合を高めることにある。

また、札幌都市圏以外からの来訪者を鉄軌道へ積極的に誘致するうえで、JR北海道との協力関係のさらなる強化も重要な検討課題だ。北海道新幹線札幌駅開業を見据え、新幹線と地下鉄の乗り換えを可能な限りスムーズにすることで地下鉄の利用を増やしたい。札幌市交通局とJR北海道のコラボが北海道の鉄道活性化に向けた大きな力になるはずである。両者の積極的な協働を期待したい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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