札幌地下鉄「日ハム移転」で乗客減少の危機 市交通局はJR北海道と協力関係を強化すべき
話を札幌市交通局の決算に進めていこう。同局が公表する「平成28年度決算の概要(高速電車)」を基に営業収益から営業費用を差し引いて営業損益を計算すると、南北線が61億円超、東西線が51億円超の営業利益をそれぞれ上げているが、東豊線は15億円超の営業損失である。
ただし、経常損益ベースでは3線とも黒字となっている。利用の多い札幌都市圏でさえも赤字のJR北海道とは対照的だ。JR北海道にとって、除雪費用が決算の重荷となっているが、札幌市交通局の地下鉄では軌道が地下またはシェルターに覆われているため、除雪費用を節約できることが黒字決算の大きな要因と推測される。
設備更新の資金確保が課題
半面、札幌市交通局は地下鉄の今後について次のように説明し、楽観的な見方を戒める。「南北線は開業から半世紀に近づいており、今後、施設設備の大規模更新・改修に係る再設備投資が必要となる。したがって、その財源確保は大きな課題となっている」(事業管理部経営計画課)。
そして、南北線の支出額が少ない要因について、次のように説明する。
「南北線は黒字路線ではあるが、東西線と比較して、減価償却費及び支払利息による差が大きい。この要因は、物価上昇等により東西線の建設コストが高額であったことと、開業(及び延伸)時期の違いによるところが大きい。先に開業・延伸している南北線は、建設時に発行した企業債をすでに償還済みであり、減価償却も進んでいるが、東西線については、平成11年(1999年)延伸時に発行した企業債の償還・利払いが続いており、減価償却費も相応に高額となっている」(同)。
同局の公表データをひもとくと、南北線の1日乗車人員は1981年の33万4135人をピークに一部の年度を除いてほぼ一貫して減少していることが目につく。
2016年度、南北線の営業利益は東西線を約10億円上回っているが、1日乗車人員は南北線23万3749人に対して、東西線は23万4060人と若干多い。
実際、乗車料収入は南北線140億円超に対して、東西線は173億円超と33億円上回っている。南北線は短距離の利用が多いのに対して、東西線は比較的長距離の利用が多いことが推察される。
東西線の1日乗車人員についても回復傾向にあるとはいえ、ピークの1991年度の1日乗車人員24万1690人に届いていない。
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