クレジットカード「勝手に使われている」恐怖 サイバー攻撃は身近なところで起こっている

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ところが、実際はそうではない。サイバー攻撃は日常生活の奥深くに潜み、こっそりお金を盗んだり、動画を撮影してばらまいたりするのである。

日々の行動を監視し、データを蓄積し、こちらが意図しない別の目的に利用されることも十分にありうる。しかも被害者になっていたとしても、当事者であるわれわれはそれに気づかない可能性も小さくないのだそうだ。

しかし、気がつかないとしても無理はないと著者は言う。なぜなら私たちのデータの大半は、もはやスマートフォンやパソコン自体にあるのではなく、クラウド上に保存されているかもしれないからだ。

iクラウドやグーグルドライブなどに大容量の画像データが保存されていないでしょうか。また、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどのSNSにアップロードされた画像やコメント、つぶやきはどうでしょうか。スマホの便利なアプリが、あなたの行動情報をクラウド上に蓄積していないでしょうか。
「そんなことはない」と思うかもしれません。実感はないかもしれません。しかし、スマートフォンのいつも使っているグルメアプリ、クーポンアプリを確認してみてください。あなたの今いる場所の近くのお店を紹介するように設定されていれば、今まさにあなたの位置情報をスマートフォンは送り続けているのです。(16〜17ページより)

ビジネスとして成立しているブラックマーケット

問題は、それらのデータがわれわれの管理下にないこと。データとしての自分がサイバー攻撃にさらされているという実感は薄くて当然だが、実感の有無に関係なく、攻撃にさらされている可能性はあるのだ。その結果、実体の人間としての自分に、直接、犯罪として降りかかってくるとも考えられるというのだから、やはり油断はできない。

驚かされるのは、個人情報の売買には、すでにビジネスとして成立している成熟したブラックマーケットが存在しているという事実である。端的にいえば、クレジットカードで詐欺をしようと思った人間は、メール1本でブラックマーケットから個人情報を購入できるというのだ。

少し古い数字ですが、2014年には、氏名や住所、生年月日などの個人情報は1件20銭から、フェイスブックのアカウント情報は1円20銭、ツイッターのアカウントとメールアドレスは2円70銭、クレジットカード情報は80円から800円で売買されていました。クレジットカード情報の価格に幅があるのは、カードのグレードや付属情報で価格が変わるからです。普通のカードより、ゴールドカードやブラックカードが高額で、カード番号、本人名、生年月日、有効期限、セキュリティコード、暗証番号、引き落とし口座、カード利用履歴など、関連情報が増えるほど単価は高くなります。一方、不正に入手した情報や商品の現金化を行うブラックマーケットも存在します。つまり、カード情報や個人情報などの販売から盗品の購入まで、完結したブラックマーケットがあり、情報の流通が成立しているのです。(19ページより)

さらに面倒なのは、クレジットカードを悪用した詐欺の犯罪者は、私たち個人に狙いを絞っているわけではないということ。

言うまでもなく犯罪者は、ブラックマーケットで買った情報のなかに含まれるデータを使って詐欺をする。そこに“たまたま”私たちのデータが含まれていれば、私たちが被害者になるという図式だ。

「いや、おそらくそんなところに自分の情報は含まれていないだろう」と思いたくなるのも無理はないし、私も似たような気持ちだった。だが著者は、「その考えもおそらく間違っています」とシビアに述べている。

例えば多くの人はスマホやパソコン経由で買い物や情報入手をするため、複数のサイトや企業に個人情報の登録をすることになる。現代においては、個人情報の登録をしない限り受けることができないサービスのほうが多いとも言えるだろう。しかし問題は、そこから先だ。

次ページ個人情報から行動パターンまで収集される
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