個人宅配、1件3分半で荷物を届ける「激務」 ドライバーに負担を強いるのはもう限界
貨物軽自動車のドライバー募集が過熱化している。ネット上で「貨物軽自動車ドライバー募集」と検索すると、収入が月額20万~100万円とかなり幅がある。1カ月で50万~70万円、または1日で1.8万~2.5万円というものもある。中には、1日3万円あるいはそれ以上といった引き抜きがあったりと、過熱な争奪戦ぶりがわかる。
背景にはネット通販市場の拡大がある。経済産業省の電子商取引に関する市場調査によると、2017年における消費者向け電子商取引の市場は、16兆5054億円と、前年比5.8%増だった。うち宅配荷物が伴う物販系分野では、2016年が8兆0043億円(EC化率5.4%)、2017年が8兆6008億円(同5.8%)と、前年比7.5%も伸びている。
このネット通販の宅配を担ってきた宅配便事業者は、社員ドライバーの労働条件の改善を図るため、宅配便の料金を値上げし、現場では貨物軽自動車の個人事業主への配達委託を増加。一方、宅配便料金の値上げは、アマゾンや楽天など大手ネット通販会社に、宅配便事業者依存からの脱却を促し、大都市圏において自前の配送ネットワーク構築を急がせている。自前の宅配ネットワークの主力になっているのも、実は貨物軽自動車の個人事業主なのだ。
なぜ社員ドライバーでなく個人事業主ドライバーか
このように、貨物軽自動車運送事業者に対する需要が増え、それを反映して事業者数も急増している。国土交通省によると、2017年3月末の貨物軽自動車運送事業者数(軽霊柩やバイク便含む)は、26万2792社。2007年3月末から2016年3月末までは、15万~16万社程度で推移してきたのだから、急増ぶりがわかる。
ある宅配元請事業者はHP上で、業務委託料として年720万円、月60万円を保証するとしている。だが、報酬体系の欄には、完全出来高制と書いてある。売り上げ保証と出来高制という、矛盾する内容が併記されており、そこに大手ネット通販会社が構築を進める、独自の配送ネットワークの問題点が秘められている。
まず、貨物軽自動車の「ドライバー募集」には、(1)社員としての募集、(2)独立を前提として最初は社員としての募集、(3)個人事業主の募集、という3パターンがある。一般の貨物運送事業では、許可取得の要件の1つに最低保有台数があるので、トラック1台では事業許可が出ない。しかし、貨物軽自動車運送事業は、1人1台の個人でも登録すれば営業行為ができる。したがって、(3)は正確にはドライバー募集ではなく、業務委託先の募集なのである。
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