【産業天気図・自動車】世界的などしゃぶり、いや台風か
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
雨、雨、大雨。雨足はさらに強まる。そしてあと2年は降り続くだろう。
11月の「トヨタ1兆円減額」がすべてを物語る。リーマンショック後の先進国自動車需要は、考えられないようなペースで真っ逆さまに落ちている。
トヨタ自動車<7203>、ホンダ<7267>、日産自動車<7201>・・・日系メーカーの北米在庫日数は100日の"レッドゾーン"に突入した(通常は50~60日なのだ!)。
もう減産しかない。分かっているだけで日系メーカー合計で国内80万台、海外100万台超の減産を実施している。それぞれ4工場分に相当する大幅減産だ。市場はまだ底入れしていない。最大市場アメリカの自動車販売台数は2008年は1250万台程度で終わると見られるが、09年は1150万台~1100万台という見方が大勢だ。毎日のように各社の減産計画が報道され、すでに食傷気味だが、残念ながらさらなる大幅な減産計画が飛び出すだろう。
為替の動向ももう1つの大きなファクターだが、当面大幅な円安反転はないだろう。鉄鋼など原材料相場の下落は好材料だが、販売自体が急落するなかではその効果も限定的だ。
悪材料も出尽くしていない。
最大のリスク要因は米ビッグスリー(ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラー)の行方だ。破綻すれば会社そのものだけでなく、部品サプライヤーとディーラーも連鎖破綻するだろう。その場合、いくつもの重大な影響が日系メーカーにも及ぶ。
1.部品供給の途絶。メーカーは通常、複数購買でリスク分散に努めているが、全てではない。「この部品はここの会社でしか作れない、ここからしか買っていない」というものが存在するのだ。代替確保できなければ、完成車の生産も止まる。
2.ディーラー破綻による債権回収途絶。
3.失業率増加による消費マインドの一層の冷え込み。
4.ビッグスリーの“過剰在庫バーゲンセール”による市場混乱。
・・・等々、数え上げればきりがない。また、救済されても、これらの規模が小さくなるだけのものだ。ちなみにこれらはいまのところ米国でのお話だが、欧州、日本でも同様の事態が起こりうる。新興国の成長にも急ブレーキがかかっており、これらの甚大なリスクをトレードオフできる材料は何もない。
市場規模が縮小するなかでは、M&Aしても図体が大きくなるだけで意味はない。大雨に飲まれて姿を消すメーカーも出てくるだろう。
(高橋 由里)
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