引っ越し業者とのやりとりで「損」しない方法 プライベート含めすべての話し合いは交渉だ

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一方で、交渉相手にプレッシャーを与える手段の1つに、「相手にとってのリスクを列挙する」という戦略があります。この場合のリスクとは、交渉が決裂した場合、相手に起きる可能性のあるリスクのことです。これはつまり、相手のBATNAの弱点を突いていることになります。

「いま決めないと…」にだまされるな

引っ越しの例でいえば、業者からは以下のようなリスクを指摘される可能性があります。

いまウチに決めないと……。

・(適切なサイズの)トラックを確保できなくなる
・値段がかなり高くなる
・希望日に引っ越しできなくなる

実際にもたもたしていたら、このような問題が起きてもおかしくありません。しかし、即決しなかったからといって、必ずしも問題が起こるというわけでもありません(繁忙期にはもちろん注意が必要ですが)。つまり、これは意図的な戦略なのです。

引っ越し業者に限らず、アパートを借りるときやクルマの購入など、いろいろな場面でリスクを列挙してくる業者に出会うことがあるでしょう。そのときは、まず相手が意図的に戦略を用いていることを認識しましょう。プレッシャーに負けることなく、リスクを冷静に評価して、契約するかどうかを判断するようにしましょう。

また、交渉学では、相手への要求を2種類に分けています。1つは表面的な要求で、「立場」と呼びます。2つ目は本質的な要求で、「利害」と呼びます。交渉のいちばんの目的は、相手と自分の利害を満足させることです。

表面的な要求(=立場)に注目して水掛け論をするよりも、背後にある本音(=利害)を探るべきなのです。自分と相手にどのような利害があるのか、そしてどういった解決策があるのか、話をして、アイデアを出し合いながら探っていくことが理想的な交渉のあり方です。

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