冬休みの「持ち帰り仕事」危険すぎる落とし穴 安易な「自宅で仕事」は大混乱の引き金に

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しかし、会社から貸与されているパソコンは持ち出しが禁止されており、年末年始の休み期間中は自宅に持ち帰ることができません。USBメモリの利用も禁止されているため、加藤さんは仕事納めの日に、普段個人で利用しているクラウドストレージサービスに、会社のパソコンから顧客情報数万件を含むプロジェクト関連のデータ一式をアップロードしました。

家族のパソコン、何に使われているか知っていますか?

パソコンが苦手な加藤さんの奥さんですが、毎年年末が近くなると家族全員分の年賀状を作成するため、どうしてもパソコンを使う必要がありました。年賀状作成ソフトの住所録には、加藤さんの会社の上司や子どもたちの学校関係の知り合い、親戚などを含めると100件近い住所や電話番号が登録されていました。人によっては誕生日まで登録されています。年賀状作成ソフトには住所録ファイルをパスワードで保護する機能がありましたが、そのことを奥さんは知らずに利用していました。

中学生の長女は、加藤さんから教えてもらい、スマホで撮った写真がいっぱいになると時々パソコンに移して、スマホの空き容量不足を解消していました。自撮り写真から友だちと一緒に写っているものまで、かなりの写真が共用パソコンに保存されており、どの写真にも撮影日時と位置情報が記録されています。スマホには撮影する写真に位置情報を記録しない設定がありますが、長女は気にしたことがありませんでした。

高校生の長男が普段から専用のパソコンをどのように使っているか、加藤さんはこれまであまり気に留めたことはありませんでした。漠然と、インターネットでの調べ物や学校の課題に利用しているのだろうと考えていましたが、実際には、長男はもっぱら漫画の共有サイトからいろいろな漫画をダウンロードして読むためにパソコンを使っていました。中には違法にアップロードされた人気の漫画もあり、zipやrarといった拡張子のついたファイルをダウンロードしていました。

ダウンロードする漫画のコンテンツには、時折マルウェアが混入していました。長男は、パソコンにインストールされたアンチウイルスソフトの「危険なマルウェアを検知・駆除しました」といったメッセージによって知っており、定義ファイルの更新は欠かさず行うように気をつけていました。ところが実際には、アンチウイルスソフトでは検知できない未知のマルウェアが知らぬ間にダウンロードされており、長男のパソコンはすでに感染していたのです。

一見すると何の異変も見られない長男のパソコンは、実際は完全に攻撃者のコントロール下にあり、SNSのログイン情報やキーボードの入力情報を盗んだりするだけでなく、ほかにも侵入できるパソコンがないか探している状態です。

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