中国がGDP世界1位を狙うたった1つの理由 「統計データ」から読み解く国際情勢の現状
そもそも、外貨準備高はどういうときに増えたり減ったりするのかというと、各国の中央銀行が市場に介入して、自国通貨の価値を強制的に高めたり、抑えたりすることが原因であることが多い。日本を例に説明しよう。
日本の外貨準備高はここ10年間ほど、1.2兆ドル程度で変わっていない。しかしかつて、あることが原因で大きく増えたことがあった。円高である。以前の日本はとりわけ輸出主導だったため、円高になると輸出が難しくなり、経済が打撃を受けてしまう。そこで、政府に委託された日銀が外貨を買って円を売るという介入をすることで、円安に戻そうとした。このとき、日銀が大量の外貨を買ったことで、日本の外貨準備高はぐっと増えることになった。
要するに、自国通貨の価値を抑えようとすれば外貨を買うので外貨準備高が増え、反対に自国通貨の価値を高めようとすれば外貨売りのため外貨準備高が減る、というからくりなのである。
中国でなぜ1兆ドルも減ったのか
これを、中国に当てはめて考えてみよう。中国の外貨準備高はあるとき4兆ドル近くまで急激に増えた後、1兆ドル近く減った。中国の経済が発展するにつれ、輸出が伸び貿易収支が黒字の期間が続いた。輸出が増えると、民間企業の間でドルなどの外貨を売って人民元を買う動きが強くなる。なぜなら、輸出した商品に対する支払いとして、民間企業は海外から外貨を受け取るが、中国の企業が従業員に対して外貨のまま給料を払うことはできないので外貨売りを行うためだ。
すると、中国の輸出増にあわせてドル安・人民元高が起こることになる。しかし、先ほどの日本の例で見たとおり、人民元が高くなると輸出が伸び悩み、中国経済が打撃を受ける。そこで、中国の中央銀行(中国人民銀行)は人民元の高騰を抑えるべく、民間企業が売り出すドルを毎日のように買い取っていたのである。そうして中国の外貨準備高は4兆ドルまで膨らみ、世界トップに躍り出たのであった。
ただ、ここ数年は中国経済が変調を来している。「ひとりっ子政策」などにより労働力人口が減少するなど、以前は10%程度あった成長が鈍化している。先行き不安のある国の通貨は売られるため、放っておけば世界中で人民元が売られまくり、急速な人民元安が起きることにもなりかねないのだが、中国としてはそれも困る。
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