マツダがガソリンエンジン開発に懸ける本気 スカイアクティブX搭載「マツダ3」の真価
なぜ今ガソリンエンジンのイノベーションなのか。その問いに対し、スカイアクティブXの開発担当者である別府耕太氏はこう語る。
「マツダとしてもWell-to-Wheelという独自の環境宣言により、2030年までにCO²排出量を2010年比で50%まで削減することを目指している。そのためにハイブリッド、プラグインハイブリッド、EVにマツダのロータリーエンジン技術を併合させたレンジエクステンダー(航続走行距離を高める装置)搭載など、さまざまなアプローチを行っている。しかしEVの世界的な導入にはまだまだ時間がかかる。世界中に車を販売する企業として、地域のインフラ差などを考慮すれば、一気にEV化が進むとは考えにくく、ガソリン車からも環境に対するアプローチを続けることはメーカーとして必須と考える」
確かに国際エネルギー機関(IEA)が昨年発表した「世界の電気自動車の見通し」という報告書を見ても、今後の世界でのEV導入台数は2020年までに900万~2000万台(インフラ整備予測などにより数字には大幅な差がある)、2025年までに4000万~7000万台と見込まれている。
IEAによれば自動車全体の6割がEVに置換されるのは2060年ごろになる、という。逆に言えば2060年の時点でさえ全体の4割の車はガソリンやディーゼルに依存していることになる。
低燃費ガソリンエンジン開発は合理的
こうした予測を考えても、自動車メーカーが一気にEV化に向けての推進を行うことは、現実の世界との乖離がある、と言わざるをえない。EV普及のためにはバッテリーのチャージステーションといったインフラ整備と同時に、EVによって増えると予想される電力消費にどう応えるか、などの問題もある。さらには廃バッテリーの回収とリサイクルのシステム確立も重要になるだろう。
つまりマツダが今の時点でこれまでにない低燃費のガソリンエンジン開発に向けて動くのは非常に合理的な戦略である。ボルボのように「今後段階的にすべてのモデルをEVにしていく」と宣言するメーカーもある一方で、開発途上国も含めた世界の全地域で車を販売するグローバルメーカーとして、すべての人が利用できる車づくりを続ける、というのもメーカーとしての責任の表れだ。
マツダがそのために今後エンジンの軸にしていく、というスカイアクティブXは、同社のスローガン「人間中心」「人馬一体」を強調する仕様となっている。クイックなレスポンス、というよりは人が動く感覚に合わせ、「無理のないスムーズな」動きをするのが特徴だ。
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