ソニーがルネサス鶴岡への出資を目論むワケ 3年後の閉鎖が決定している工場に一筋の光
鶴岡工場が存続すれば、技術も地元の雇用も守ることができる。ルネサスにとっても特別退職金や固定資産の除却損など莫大な損失計上が避けられる。しかしソニーの出資に難色を示したのは、意外にもルネサスの鶴丸哲哉社長だった。
鶴丸社長は日立製作所の出身者で、那珂工場の工場長を務めた経歴を持つ。ルネサスは車載用半導体に集中して再成長を目指す計画を掲げており、車載用マイコンを生産する那珂工場は主力拠点として生産継続が決まっている。
しかし構造改革を続ける中、那珂工場への設備投資はままならない状況にある。ならば鶴岡工場から那珂工場へ製造装置を移設すれば競争力の強化につながると考え、ソニーの提案に対する反応は鈍かった。たまりかねた経済産業省が、両社の間に立って橋渡し役になったほどだ。
装置の一部を移動させるが
鶴岡工場の一部装置を那珂工場に移設することは、ソニーも了承済み。しかし肝心なのは中身であり、根こそぎ重要な製造装置を移設すると鶴岡工場はもぬけの殻になってしまう。
ソニーがどこまで装置を買い足して生産するのかは不透明であり、出資額を最小限に抑えるため、ごく少量の生産から開始する可能性も考えられるだろう。鶴岡工場が存続したところで、生産規模が低水準なままでは数年後に再び閉鎖の危機が訪れても不思議ではない。
すでに那珂工場では、鶴岡工場の一部ラインのテスト生産が試みられている。結果はさんざんで、「驚くほどの不良品が出来た」(関係者)。製造装置の移設・立ち上げには多くのエンジニアが必要な上、100億円以上の費用がかかってしまう。そこから生産を安定化させることは簡単なことではない。
ソニーが気にするのは、鶴岡工場の製造装置と技術者がどこまで残るかだ。その上で出資額を検討することになるため、ルネサスとソニーの綱引きは当面続くことになりそうだ。
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