ソニーがルネサス鶴岡への出資を目論むワケ 3年後の閉鎖が決定している工場に一筋の光

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さらに現在、CMOSイメージセンサーの一部生産を委託している富士通の三重工場にも不信感を募らせている。富士通は三重工場を大手ファンドリーの台湾TSMCへ売却交渉を進めており、もし実現すれば技術流出のおそれがある。ソニーはリスクを分散する上でも、新たなパートナーを求めている。

ただし社内は一枚岩ではなさそうだ。より生産現場に近い幹部たちは鶴岡工場の買収を考えている一方、経営上層部はファンドリー委託の形態を模索している。数年後もソニーがトップシェアに君臨し続ける保証がないからこそ、経営幹部はリスクと出資額を少しでも抑えたいのが本音。鶴岡工場の生産ラインを転用するには一部装置を買い足す必要があり、300億円前後の出費が生じる可能性がある。

任天堂の不振で稼動率が低下

任天堂「WiiU」の売れ行きは低調だ

一方のルネサス。8月2日には、鶴岡工場をはじめとする甲府工場や滋賀工場などの閉鎖を発表した。鶴岡工場は任天堂のゲーム機向け半導体が主力だが、「Wii」「WiiU」の販売不振を受けて工場稼働率は低下が続く。

「任天堂の半導体は相当数の在庫を抱えていることは間違いない。鶴岡工場が閉鎖になっても困らないのでは」とある半導体メーカー幹部は打ち明ける。

鶴岡工場は旧NECエレクトロニクスの流れをくみ、混載DRAMという、記憶回路であるDRAMとロジック回路というまったく製造工程が違う2つを1枚のウエハ上で実現できる世界唯一の技術がある。ソニーが魅力を感じたのも、この高い技術を支えるエンジニアがいるためだ。

2~3年前から鶴岡工場は、大手ファンドリーの台湾TSMCなどへの売却が試みられたが実現しなかった経緯がある。さらに「週刊東洋経済」でたびたび報じてきたように、鶴岡工場の独立計画もあった。産業革新機構の一部や海外半導体大手、国内事業会社などが出資した新会社がルネサスから鶴岡工場を買い取る案だった。

これも産業革新機構がルネサス本体に出資し、筆頭株主になったことで頓挫。絶望的かと思われたが、今年の夏にソニーが急浮上したことで再び薄明かりが射し始めている。

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