武田薬品の次期トップはなぜ外国人なのか 属性を問わずリーダーとしての資質のみで人選

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「トップが長期間務めると、プラスよりもマイナスが大きくなる」(長谷川社長)ため、約1年前から候補者選びに着手した。社外のアドバイザーに相談しつつ、候補者をリストアップし、長谷川社長自身が相手にコンタクト。もちろん、社内にも候補者はいたが、相対的に見て、今後の武田の課題によりよく対処できる人間を「バーを高くして選考した」(長谷川社長)結果、ウェバー氏が選ばれた。

武田の経営上の急務は、新興国事業の改善。武田は新興国に多くの販路を持つスイスのナイコメッド社を2011年10月に約1兆円で買収したが、のれん代が大きくいまだに会計上の収益貢献はマイナス。今後、武田の新薬を新興国に売っていくためには、ナイコメッドの組織や営業を変えていかなくてはならない。そうした変革は「以前に同じような体制を作り、運用したことのある人間じゃないと、世界中の現場を納得させられない」(長谷川社長)。

ウェバー氏は新興国ビジネスを経験

ウェバー氏は現在、英グラクソ・スミスクラインのワクチン社社長兼バイオロジカル社CEOを務めているが、それ以前はシンガポールにあるグラクソ・スミスクラインのアジア太平洋地域担当上級副社長兼地域ディレクターとして新興国の市場で商売をしてきたうえ、3大陸7カ国に住んだ経験がある。ダイバーシティに富む点が今回の選考で評価されたようだ。

来年4月にCOOに就任後、ウェバー氏は6月の株主総会で代表取締役となり、1年程度、長谷川会長兼CEOと併走後、バトンを受けることになる。前述の通り、研究開発も財務も責任者は外国人で、トップまで外国人となると、決算説明会はほぼ英語。どこの国の会社かわからなくなりそうだが、国内トップの武田でさえそこまでしないとグローバル競争に落伍しかねないのが製薬業界の現実ということだ。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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