早稲田大学が「起業インターン」を始めたワケ 営業利益の25%を学生に支払うほど実践志向

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ただしあくまでインターンなので、学生たちが起業して取り組む事業は、受け入れ企業が最終責任を負う。インターンを受け入れるビジネスバンクグループは、もともとベンチャー企業の支援を手掛ける。同社の浜口隆則代表は「このプログラムを通じて、学生たちに起業という選択肢があることを知って欲しい」と語る。

インターンは1年間続く。最初の半年は商品開発やPDCA(仮説検証)プランの作成、取引先の交渉などを行う。その後、浜口代表や弁護士などからなる評価委員会が事業評価を行い、合格したチームだけが次のステージに進む。後半の半年間では実際に営業活動を行い、契約業務や販売管理、経理なども経験する。

自動車免許の教習に例えれば、始めの半年で技能教習、残りの半年で路上実習に出る。ただし学生たちに与えられるのは「仮免許」。「学生にハンドルを握らせるが、ブレーキは受け入れ企業が代行できる」設定だ。

学生たちはインターンが終了する1年間で、事業の利益を出すことが求められる。一方で、終了時に営業利益が出た場合、その25%は就学奨励金として学生たちに支払われる。それが事業へのインセンティブとなる。

まずは"フェイルファースト”

なぜインターンなのか。やはり大学の授業の一環である以上、学生にリスクを負わせられないという制約がある。事業の契約主体はあくまで受け入れ企業であり、受け入れ企業と学生の間に債権債務関係も発生しない。

現実の起業を考えた場合、1年間という時間の制約も厳しい。ただ、企業のビジネスモデル研究が専門で、起業インターンの立ち上げに尽力した井上達彦・早稲田大学商学学術院教授は、「大学の修士、博士論文を仕上げることと同じ」と語る。「修士論文では10年以上かかるテーマを1~2年で仕上げる。その過程で研究者として必要な素養を身につけていく。起業も同じ。大切なのはテーマ設定であり、それを短い期間で完結させることが大事」(井上教授)。

日本では新規開業率の低さが指摘されているが、インターンの狙いの一つは、まさに起業を志す学生を増やすことにある。ただ、目線はもっと現実的だ。「仮に起業に成功しても一生食べられるわけではない」(井上教授)。生涯年収で見ると、起業するより企業で勤め上げたほうが高いというデータもある。

「起業をあおってはいけない。まずは“フェイルファースト”(まず失敗すること)。できるだけ早い時期に起業の一連のプロセスを経験させ、学生が自身で気づきを得ることを狙っている」(同)

浜口ビジネスバンク代表も「起業家として自分で壁を突破できる人は、こうした授業は必要ない。一方で、背中を押さないと突破できない人たちもいる。そういう人たちのレベルアップにつなげていきたい」と話す。

起業の理想と現実――。その一つの解が起業インターンだったといえるだろう。文科省によるEDGE-NEXTの補助期間は原則5年。このインターンも5年間で一定の成果を出さないといけない。今後5年間で立ち上がる”会社”が利益を上げ、事業継続のための内部留保を作っていけるか。取り組みは始まったばかりだ。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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