”年金破綻”は本当か--年金の誤解を解く! 未納者が増えると年金は破綻するのか、年金を税方式にすることは妥当なのか...年金の専門家・堀勝洋上智大学法学部教授が、年金にまつわる疑問・誤解に明快に答える。

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Q4.低年金者への支援をどうするか?
 A.保険料軽減者の基礎年金額を引き上げる。

保険料を払わなかったため無年金になっている、あるいは保険料は払ってきたけれど年金額が低い、という人がいます。年金制度は高齢者などの生活保障が目的ですから、大きな問題です。

基礎年金の受給開始年齢である65歳まで国民年金の保険料を払うことができることなどもあって、年金が支給されない無年金者の数は42万人とそう多くはありません。老齢基礎年金の受給権者総数2200万人に対する無年金者の割合は2%弱です。

一方、低年金者は相当数います。満額の老齢基礎年金の月額は一人当たり6・6万円ですが、老齢基礎年金の受給権者の平均年金額は、全体では5・3万円です。その分布を見ると、6万円台が889万人と最も多いのですが、5万円未満が830万人以上もいます。とりわけ単身の女性高齢者に低年金者が多くなっています。

無年金・低年金者は、最終的には生活保護で暮らすことができますが、年金制度として何らかの施策を講ずべきという意見があります。

その具体策として、

(1)「給付時」に対応する
(2)「拠出時」に対応する
(3)税方式を導入する

--が考えられます。

(1)の給付時の対応とは、低年金者に一定額の年金を保障する仕組みです。これには滞納者にも満額の「最低保障年金」を支給する案がありますが、保険料を納めた者に年金を支給するという年金制度において妥当か、疑問があります。また保険料の滞納を招くおそれがあります。

このほか基礎年金が満額であるか否かにかかわらず、所得が低い単身高齢者の基礎年金に、「単身低所得高齢者等加算」を行うという考えがあります。一つの考えですが、公費負担により、所得制限付きで行うべきものだと思います。

(2)の拠出時の対応は、保険料を払う段階で、所得に応じてその一部を軽減し、その期間分は満額の基礎年金を支給するものです。この案は実現可能性の高い案ですが、サラリーマンと自営業者等に所得捕捉の差があるといういわゆるクロヨン問題があるため、保険料を軽減する際に所得調査を相当程度厳格に行う必要があります。

以上のいずれの案も相応の財源が必要ですが、財源の確保の方法や目途を考えておく必要があります。

(3)の税方式は、基礎年金部分をすべて税で賄おうとするものです。税方式への移行には、円滑に移行できるかという問題や、Q5で述べるように多額の財源を要するという問題があり、慎重な検討が必要です。

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