希代のカリスマ経営者、日産自動車のカルロス・ゴーン氏の衝撃的な逮捕劇。まさに時の権力者が一瞬にして、「落ちた偶像と化す」(AFP通信)という展開に、世界のメディアは持ちきりだ。日産とルノー、日本とフランス、企業や国の思惑も絡んで、今後も一波乱、いや二波乱も起こりそうな様相だが、そうした法的、ビジネス的な話はひとまず置いておいて、今回は「リーダーの金とカリスマ」について考えてみたい。
偽善者は、道徳観や価値観を持っているふりをする?
『Forbes』によれば、ゴーン氏の前妻リタ・ゴーンさんが、逮捕の後、ソーシャルメディアにこんな投稿をしたという。「すべてのナルシストは偽善者。彼らは本来、持っていない道徳観や価値観を持っているふりをする。閉ざされたドアの後ろで、彼らはうそをつき、侮辱し、批判し、軽蔑し、悪用する。彼らはしたいことをし、言いたいことを言う。(中略)彼らはほかの人たちにはルールを押し付けるが、自分たちはそれを守ることはないし、説教しても、それを実行することはない」。
この前妻と離婚し、現在の妻と結婚する際には、ベルサイユ宮殿で派手な結婚式を挙げたことなどが伝えられているが、彼の華やかなライフスタイルは、ネット上でもうかがえる。セレブが参加するガラパーティやレッドカーペットにも家族などと頻繁に登場し、欧米の社交界の常連だったようだ。彼が日産から公式に得ていた報酬は1年で8億~9億円程度だったが、それでは十分ではなかったようで、さらに多額の金や便宜を裏で得るようになったと伝えられている。
公表されていた額でも、日本人の感覚からすれば大金だが、クレイジーリッチなグローバルCEOの水準からすると大したことないのである。ウォールストリートジャーナルの大企業500社のトップの2017年の報酬についての調査によれば、平均が大体1210万ドル(約13億円程度)。最も高い人では、1億ドル(約110億円)、競合の自動車会社、GMのCEOは2200万ドル(約24億円)に上っている。日産の企業規模からすれば、公表された数字の倍以上の額をもらったとしてもいいはず、とゴーン氏が感じていたとしてもおかしくない。逆に言うと、グローバルスタンダードからすれば、日本のトップの報酬が少なすぎるのである。
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