日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される

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昨年同様に今年ほど、トラブルの問題処理が問われた年はなかったのではないか。数多くの日本企業や教育機関の広報部門の質の劣化だけではなく、そうした問題解決に優秀な人材や資金を投じていないことも明らかになった。

しかし、それ以上に問われるのは「トップ」の資質だ。不祥事に対して組織のトップが最後まで公に顔を出さずに幕引きを図ろうとしたり、会見を開いたとしても誠意のない対応を見せたりするようなケースが目立つ。

背景にはあるのは、日本企業の多くが終身雇用制を取り、新卒一括採用で採用された社員が、派閥争いを生き抜いてトップに上り詰めたような人が多いからだと、個人的には考えている。イエスマンであることがトップになる条件であり、彼らには謝罪や反論は苦手なのかもしれない。

結局はガバナンスの欠如とコンプライアンスの概念失墜

日本企業のトラブルが相次いでいる直接的な原因のひとつは、「コーポレートガバナンス(企業統治)」の欠如が原因と言っていいだろう。とりわけ、グローバル化が遅れている日本企業の中ではコーポレートガバナンスが欠けている企業や団体が目立つ。

最近になって教育機関のガバナンスも問題視されているが、これも海外との接触があまりない機関独特の問題と言っていいかもしれない。

コーポレートガバナンスというのは、東証などを傘下に持つ日本取引所グループの定義によると「会社が株主をはじめ、顧客や従業員、地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」となっている。

そのためには、「適切な情報開示と透明性の確保」という項目が基本原則として設けられている。適切な説明責任が、きちんとした情報開示とともに実施されることが、ガバナンスを維持する最大の要件の1つと言ってもいい。

コーポレート・ガバナンスは、企業が存続可能な成長を維持するために必要不可欠なものであり、そのためにどんなことをすればいいのかを企業は常に考えていかなくてはいけない。ちなみに、これは政府や自治体などにも言えることであり、ガバナンスができていない団体は今後もさまざまな問題を連発し続けることになるはずだ。

そしてもう1つのトラブルの原因の1つが、「コンプライアンス=法令遵守」という概念の確立だ。当たり前のことかもしれないが、最近の日本企業の不祥事を見ていると、明らかに法律に反していることを平気でやっているケースが目立ってきている。企業利益を追求するあまり法令遵守を怠るといったことは、ありえない話だ。個人よりも企業、といった歪んだ価値観が日本社会には根強く残っている。

内部告発制度が国際的に求められているのも、 こうしたコンプライアンスとの関係が大きい。サウジアラビアのジャーナリストがトルコ国内で殺害された事件も、以前なら絶対に表にできないことが、現在では簡単に表ざたになる。

最近のさまざまなトラブルの原因と問題解決を急がなければ、日本企業はますます世界から取り残されていくことになるかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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