スバル、品質問題の泥沼から抜け出せるのか 要のエンジン部品でリコール、販売店は疲弊

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販売店は逼迫している。1年前から軽自動車「サンバー」の大規模リコール対応に多くの人手を割かれ、すでに息切れ状態だった。そのさなかに完成検査のリコール対応の仕事が続々と降りかかってきた。自動車業界は整備士不足で簡単に人を増やすこともできない。リコール、すなわち部品の回収・無償修理は、自動車メーカーが国交省に届け出た後1年以内に行う必要があり、現在の進捗率は80%だ。

スバルの水平対向エンジン。構造は複雑でバルブスプリングの交換には時間を要する(撮影:尾形文繁)

しかし、新たな2件のリコールで販売店の逼迫状態がさらに長引くことは必至だ。バルブスプリングのリコールではより強度のある部品に交換するが、エンジンを車から外し、シリンダーヘッドやカムシャフトなどを分解する必要がある。問題のバルブスプリングを交換し、再度エンジンを組み立てなおすまで、12~13時間はかかるという。スバルの水平対向エンジンは、左右にシリンダーがついているため余計に時間がかかる。

販売店に漂う疲弊感と不安

スバル本社は交換を迅速に進めるため、全国に8カ所の整備工場を新設する。ディーラーで預かった車両を送り込み、集中的にリコール作業を行う。ディーラーでのリコール作業と合わせて、1年での収束を目指す。

さらに完成検査不正の追加リコールものしかかる。今回もこれまで同様リコール作業の分散を図るため、ユーザーが車検や法定点検のタイミングに合わせて車両を持ち込む場合には、検査内容の重複分5万円がユーザーに支払われる。販売店の負荷を少しでも軽減しようというスバル本体の取り組みだが、現場には疲弊感が漂う。「もうウミは出し切ったと言っていたのに、またこれでがっかり。会社がもうだめなんじゃないのかとみんな不安に思っている」と、ある販売店の店員はつぶやく。

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