米国株はなお長期上昇トレンドの中にある 個人投資家がトレードで利益を上げるには?

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――一方で、アメリカの長期金利が上昇し続けています。10年国債の利回りは、今後もじわじわと上昇しそうです。そうなったとき、今年の2月や10月に起きたような株価の下落を上回るようなクラッシュが起きる可能性はありませんか?

カウフマン:今の環境を、たとえば1987年10月に起こったブラックマンデーと比較する声が市場にあるのは事実です。当時、アメリカの株価は順調に値上がりしていましたが、長期金利は7%台から10%台まで大きく上昇しました。短期金利の指標であるFFレートの誘導目標値も、6%から7.25%まで段階的に引き上げられたわけですが、ブラックマンデーはその最中に起きたわけです。

今年はすでに3回利上げが行われ、12月のFOMC(アメリカ公開市場委員会)で年内最後の利上げが行われるかどうかという局面ですが、株価の乱高下が続いたら、いったん利上げを止めるしかないでしょうね。ちなみに来年は3回の利上げが予定されていますが、やはり株価次第だと思います。

――長期金利はどのくらいまで上がったら「高い」という認識になるのでしょうか。

カウフマン:少なくとも現時点の水準は、そんなに高いというイメージはありません。住宅ローンに関していえば、現在の水準は6%前後ですが、もう少し上昇したとしても、ネガティブな影響は出ないでしょう。それよりも、州や地方の固定資産税の控除が、1万ドルで制限されるという税制改革のほうが問題です。これが通ったら、ニューヨークやシカゴ、カリフォルニアといった人口の多い地域ほど、住宅市場にネガティブな影響が及ぶおそれがあります。

乗り続けないと利益の最大化は見込めない

――個別企業の株価を見ると、GAFAやFANGといった企業の株価は下落した中でもまだ割高という印象を受けるのですが、今後の動向をどのように見ていますか。

カウフマン:私は、株式アナリストではないので、割高か割安かというのはお話ししません。個人的には、アップルは、タイタニックのような、つまりは沈みゆく船だと思っています。一方で、アマゾンに関しては、まだ成長余地があると見ています。なぜなら、さまざまな業態を持つなかで、政府が大きくなることをとがめていないからです。

アマゾンやテスラなどに関しては、PER(株価収益率)を見れば割高ですが、個人投資家はそれを見るとなかなか買えないでしょう。しかし、システムトレードにかかわる者として、ひとつ言えるのは「ここで乗り続けないと、利益の最大化は見込めない」ということです。テクニカル面で言えば、今はなおトレンドフォローなのです。アマゾンやテスラについては、この株価上昇に、とりあえずついていく。答えはマーケットが教えてくれるでしょう。

――過去のNYダウを見ると、中間選挙年の後は相場は強いというアノマリーがありますが、今回もそれは当てはまるでしょうか。

カウフマン:仮に民主党が上下両院のいずれかで勝ったら、株価は下げるでしょうね。なぜなら住宅に関する税制改正をめぐって、混乱が生じるおそれがあるからです。また、上下両院のいずれかで民主党がイニシアティブを取ることになれば、大統領の弾劾にもつながりかねませんね。

――過去、ブラックマンデーやITバブルの崩壊など、アメリカの株価は何度も暴落しています。それらの時と比べて、今何か異常な兆候は感じられますか。

カウフマン:暴落は予期できませんね。「米中貿易戦争」は大いに懸念していますが、テクニカル面からは何か大きなショックが起こるような気配は見られません。今の株価は、長期的な上昇局面のただ中にあるというのが、私の基本認識です。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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