徴用工判決の「放置」は日韓関係を泥沼にする 文大統領は金大中氏の功績を無にするのか

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ここでいう「適切な措置」とは、判決で新日鐵住金が支払いを命じられた損害賠償金を、韓国が新たな国内法を制定して、韓国政府の予算で元徴用工に支払うという内容を意味している。この解決策は朴槿恵(パク・クネ)政権時代から韓国政府が日本政府に非公式に伝えていた。

当時、私が会った韓国外交部の幹部は、「仮に日本企業に支払いを命じる判決が出た場合、それを韓国政府が認めたら日韓関係はおしまいだ。したがって日韓関係に悪影響を及ぼさないよう韓国政府が代わりに払うしかない」と断言していた。

しかし、政権が保守派から進歩派の文在寅政権に代わったことで、この案はほぼ実現不可能となっている。植民地支配を不法であると断言した判決は、多くの韓国民に支持されるであろう。文在寅大統領は世論の支持率を人一倍気にするだけに、支持率低下につながるような政策はとりにくいだろう。仮に政府がやるといっても、韓国議会で与野党共に反対するため法案の成立は見込めない。

韓国内には、韓国政府が中心となって財団を設立し、賠償金を支払うという案が出ているという。その財団には日本の経済支援を受けた浦項総合製鉄(現ポスコ)や日本の政府と企業も参加するという構想だ。これも同じ理由で実現性は低い。

日本政府はいよいよとなれば、日韓請求権協定に定めた仲裁の規定に基づいて、仲裁委員会を作って協議する、あるいは最後の手段として国際司法裁判所に訴えることも示唆している。しかし、いずれも韓国政府が応じなければ実現しない話であり可能性は低い。つまり、現時点では何の展望も描けない状態である。

慰安婦問題では「和解・癒し財団」が解散へ

そんな中、韓国政府はさらに日韓関係を揺さぶる決定をしようとしている。2015年の従軍慰安婦に関する日韓合意に基づいて設立された「和解・癒し財団」を解散するというのである。

この財団に対しては韓国国民の反発が強く、理事の多くが辞任したため機能が停止してしいる。文在寅大統領は9月、安倍首相と会談した際に「韓国国民の反対で正常に機能しておらず、解決する必要がある」と述べており、遠からず解散が正式決定される見通しだ。

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