イオンが引き金、食品スーパー大再編へ号砲 地方小売りの提携・再編が相次ぐ理由とは?

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この先、競争激化による厳しい経営環境が想定されるため、「自分たちの意思で未来が描ける状態で提携を決めた」(尾﨑会長)と、経営体力があるうちに最大手と組む道を選んだ。

尾﨑会長は「可能であれば仲間を増やしたい」と、早くも提携先拡大を示唆する。折しも、イオンは全国6エリアの14社をエリアごとに統合し地域密着化を進めることを宣言。地方への攻勢を強める構えだ。こうした一連の動きに対し、地方の有力スーパーは真っ向勝負の姿勢を見せる。

西友が今後の焦点に

フジと同地域を地盤とする総合スーパーのイズミは、セブン&アイ・ホールディングスと今年4月に業務提携した。「今後もM&Aは積極化する。中・四国、九州でよい案件があれば進めたい」(イズミの山西泰明社長)。アークスの横山社長も「一昨年からM&Aの相談が増えてきた。この2年ぐらいが大勝負になるだろう」と見通す。

さらに、大型再編の焦点の1つとなるのが、米ウォルマート傘下で全国に300超の店舗を構える西友だ。西友は地域ごとに切り離して売却される解体ストーリーが現実味を帯びており、有力スーパーが虎視眈々と狙う。「北海道や東北には西友店舗が20店超ある。再建・運営するには適正規模」(アークスの横山社長)、「九州の店舗に限定するのであれば買収交渉に入りたい」(イズミの山西社長)。

デジタル化やキャッシュレス対応など業界には課題が山積する。イオンの岡田社長は「新しい形の店舗に変えて、経営自体も新しいものに変えていく必要がある」と語る。単なる規模拡大の追求ではなく、次世代の運営を見据えた連携が重要になってくる。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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