JR西「恐怖の研修」は変わらぬ体質の象徴だ あの「福知山線脱線事故」から何を学んだのか
根深く残る組織の文化
「JR西日本は本当に安全最優先の企業になったのでしょうか」
今年4月に『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(以下、『軌道』)という本を刊行してから、さまざまなところで聞かれる。2005年の福知山線脱線事故で妻と妹を失い、娘が重傷を負わされた遺族の淺野弥三一氏が、JR西の組織風土と安全思想の変革を求めて闘った10余年の歩みを描いたノンフィクションである。同社のミスやトラブルが報じられると、「JR西はまったく反省してませんね。あの事故から何を学んだのでしょう」と憤る声が寄せられる。
この問いに歯切れよく答えるのは難しい。「企業理念や安全思想は、事故に学び、確実に変わろうしている。けれども国鉄から続く3万人もの企業が、現場の末端に至るまで、長年染み付いてきた仕事のやり方や発想を変えるのは、そう簡単ではないでしょう」と返すのがせいぜいだ。
同社は福知山線事故後に「安全確保こそ最大の使命」とする安全憲章や企業理念を定め、事故の教訓を伝える研修を全社員に繰り返し受けさせている。安全投資を増やし、リスクアセスメントへの取り組みを強化し、ヒューマンエラー非懲戒などの新制度も打ち出した。「懲罰的な精神論で、運転士に強いストレスを与えている」と批判された日勤教育(ミスをした乗務員への再教育)を見直し、技術重視の実践的な内容に改めた。
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