大井川鉄道、「グッズ」が象徴する経営の変化 「トーマス」以外の独自商品が続々登場

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大井川鉄道に聞くと、2003年ごろから自社でも一部は開発を手掛けていたものの、基本はグッズ制作会社の提案を受けて採用の可否を決定していたという。だが「きかんしゃトーマス号」の運行開始以来、同鉄道を訪れる客層が幅広くなったため、これに合わせた商品を開発すべく自社で企画を行う方針に切り替えたという。

このため、商事部では新たに人材を採用。2017年10月ごろには新商品開発のためのプロジェクトもスタートした。商品の企画にあたっては商事部のほか、営業部、管理部、企画部、鉄道部の各職場から計19人の社員が参加し、多角的な視点で検討を進めて「何をつくるか」を決める。さらに、商品は販売数量を予想したうえで一括して買い取る形で発注しているため、在庫を見つつ少量発注を繰り返す方式に比べて利益率が高いという。

購買層は、トーマスグッズについてはファミリー層、大井川鉄道オリジナルグッズの多くは成人男性が中心だという。1人当たりの購買額については数字がないとのことだが、商品単価が上がっているため、購買単価も飲料・菓子類を除くと1000円超になっているようだという。オリジナルグッズの平均的な価格帯は500~800円だ。安いものなら300円台からあるが、4500円のカメラストラップなど比較的高額な商品もある。

「外部の血」入れた効果が

従来は「受け身」の姿勢だったグッズ販売が、能動的な商品開発・販売に移行したのは、エクリプス日高出身の前社長、前田氏の影響だという。

大井川鉄道オリジナルグッズが数多く並ぶ土産物売り場。千頭駅にて(筆者撮影)

商品づくりの前提として、前田氏は「視覚」で訴えることの重要性を説くとともに、そのためのPOPの作成や陳列にも細かな指導が入ったという。たとえば陳列にあたっては、買い手を引き付ける施策を徹底的に指導するとともに、商品それぞれが持つ役割を踏まえ「それらをきちんと区分けして陳列するように指導されました」と社員は話す。

今年の「きかんしゃトーマス号」は6月9日から10月14日まで運転された。夏場に走った「きかんしゃジェームス号」とともに例年どおりの大人気で、相変わらずなかなか予約がとれなかったとの声を聞く。12月にはクリスマス特別運転も実施される。

エクリプス日高による経営体制の下で着実に改善を続けてきた大井川鉄道。観光鉄道にとっては収益面で無視できない「グッズ販売」についても、過去の延長ではなく、外部の血を入れた成果が出ているようだ。

10月17日には倒木によって倒れた架線柱に電車が衝突する事故があった。安全面での対策強化なども含め、大井川鉄道がどのような会社になっていくのか、引き続き注目していきたい。

伊藤 博康 鉄道フォーラム代表

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いとう ひろやす / Hiroyasu Ito

1958年愛知県生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、パソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。鉄道写真の撮影や執筆なども行う。

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