アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか

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アデルソン氏としては、日本でカジノライセンスを取得するための内部のツテを獲得したということを隠してはいない。プロパブリカが報告しているように、アデルソン氏は最近の株主への決算説明において、ロビー活動の取り組みが成功していると話した。「事情を知っている人々、事情を知っていると述べる人々、われわれが事情を知っていると信じる人々による推定によれば、われわれは、1番目の候補である」とアデルソン氏は述べている。

アデルソン氏は最近、日本での活動について、はるかにオープンにしている。2017年9月、彼は知事と市長に会うために、自身のカジノの有力候補地である大阪を訪れた。アデルソン氏は、ギャンブル用のカジノリゾート空間の大きさに関する規制について、何の良心の呵責も感じずに、IR実施法の初期草案を批判した。そして、7月に法律が可決されたとき、カジノの床面積の制限はなくなっていた。

日本に窓口を置かずに活動しているサンズ

MGM、ウィン、シーザーズ、マカオの大手メルコなどの大企業を含むほかの多くのカジノ運営会社は、ライセンス取得のための入札に専念している。より小規模の事業者は、小規模の地域センターでのライセンスを取得したいと考えている一方、大規模なカジノは、東京と大阪での設置に目を向けている。

その中には、日本に事務所を構えて非常に大きな一般向けキャンペーン、地域や他の当局に働きかけるための豪華なイベント、広報活動の取り組みを行っている企業もある。しかし、サンズはそのような取り組みをほとんどしていない。

カジノ業界誌『アジア・ゲーミング・ブリーフ』は先月、「サンズは、日本の主要なIRライセンスの1つの最有力候補であると、ほぼ一般的にみなされている」と報道した。「しかし、その戦略はほかの企業のものほど明らかではない。サンズは日本に窓口を設置せず、代わりにシンガポールからキャンペーンを実行している。サンズは日本で有力な代理店を雇っているが、その活動は巨大な氷山を思い起こさせる。水面の上にあるものは水面下にあるものよりも確実に矮小だ、ということである」。

表面下の氷山はトランプ大統領・安倍首相・アデルソン氏の三角形であると暗示されている。プロパブリカの報道内容は、アメリカで急速に広く注目を集めており、影響力のあるニュースサイト「アキソス」を含む多くのメディアで報じられている。

通常臆病な日本のメディアもこれについて報道し始めたが、これからカジノゲートについて自ら調査を始めるだろうか。それのみが、このスキャンダルがたとえばロッキード疑惑のレベルにまで拡大するか、あるいは、つねに素早い安倍首相が政治的な大惨事からなんとか脱出する方法の一例になるかを決定するだろう。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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