ユニクロ、見えた「世界ブランド」化への秘策 2019年度は海外ユニクロの利益が国内を抜く

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手ごろな価格でデザイン性の高いトレンド商品を高頻度で投入するZARAに対し、ユニクロはベーシック商品が基本。ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンなど、主力商品は防寒や軽量といった機能性をウリとする。ファーストリテイリングは高機能な「未来の服」を作るに当たり、各分野の先端技術を持つトップ企業のノウハウを取り入れることを得意技としてきた。

提携戦略を進める柳井正会長兼社長(撮影:梅谷秀司)

もっとも、目に見えない機能性は、デザイン性と比べ価値を伝えづらい。それもあってか、ここ最近は欧米での認知度拡大に向け、柳井氏本人の積極的な動きも目立ってきた。

昨年10月にはニューヨークで、商品開発で長年協業している素材メーカーの東レとユニクロの合同イベントを初開催。柳井氏と東レの社長が現地に赴き、ヒートテックなどの機能性衣料をPRした。今年9月にはパリでユニクロのニットに関する展覧会が開かれた。会見にはニットの生産でパートナーシップを結ぶ島精機製作所の社長と柳井氏が臨み、島精機の縫製機械によって縫い目なくニットを編み上げる「ホールガーメント」の技術などを紹介した。

「世界中で自動倉庫を作る」

「世界最高のパートナーと一緒にパートナーシップを組み、最新の情報と技術を活用し、まったく新しい産業を作り出す」。決算説明会の場で柳井氏はこう宣言し、あらゆる企業や個人と連携して世界中でユニクロブランドを強化していく方針を改めて強調した。9月には米グーグルとAI(人工知能)の活用で本格提携を発表したばかりだ。

東京・有明の物流倉庫。自動化が進み人の姿はほとんど見られない(撮影:梅谷秀司)

さらに決算発表2日前の10月9日。ユニクロは物流機器大手・ダイフクと戦略的パートナーシップの合意書を締結し、東京・有明にある同社のネット通販専用の物流倉庫を初めて報道陣に披露した。

最新鋭の装置の導入や、ICタグを活用した検品により、在庫情報の集約や省人化を実現。今後はダイフクとの協業体制の下、海外を含めすべての物流拠点で同様の自動化を進めていく考えで、総投資額は1000億円規模を見込むという。「2~3年くらいで世界中に自動倉庫を作りたい」(柳井氏)。

「服を変え、世界を変える」と、ことあるごとに強調する柳井氏。素材、縫製機械、物流など、各分野のトップ企業をパートナーに取り込む独自戦略で、その野望を実現できるだろうか。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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