新人で最多勝。ヤクルト小川のすごいメンタル 小柄で球も速くないのに、小川が勝てる理由

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自分の中では「普通」

基本は自分のスタイルを持ちながら、状況によっては相手の間合いを外そうと試みる。臨機応変に技を使い分けられるからこそ、小川は調子の悪いときでもチームに勝利をもたらすことができるのだろう。

そうした取り組みを1年間続けたことで、自身を成長させることができた。

「調子が悪くても1試合投げなくてはいけないことで、気持ちがタフになりました。気持ちでカバーするのが大事だと学びましたね。バッターを抑えるために、必要なことがいくつかわかりました。それをひとつひとつ引き出して、悪くても悪いなりに投げられればいい」

結果、セ・リーグの誰より勝利数を積み重ねた。だが、小川はまだまだ貪欲だ。9月28日、登板前日の囲み取材で15勝を挙げたことへの自己評価を聞かれたときの答えに、小川の勝てるメンタルが凝縮されていた。

「周りから『すごい』と言われるし、先輩からもそう言われます。でも、自分の中では『普通』と捉えていますね。『すごいな』、ではないです。また来年もやって来ます。いい意味で、15勝したのは過去のことと捉えてやっていきたい。今年は今年で頑張りました。来年も頑張ろうという感じですね」

プロで長く活躍する大ベテランほど、貪欲さを持ち続けているものだ。まだまだ勝ちたいから、積み上げてきた成績を過去のものと捉える。自身を客観視し、現状と課題を冷静に分析する。

新人にして大ベテランのように勝てる要素を備えている小川は、2年目以降も無数の勝ち星を積み上げていくはずだ。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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