東急の新ビル「見えない難問」は解決できる? 渋谷ストリーム、「川沿いがにおう」の声も

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店舗内で感じることはなくても、やはり飲食業関係者にとってにおいは多少なりとも気がかりなようだ。ある飲食店の広報担当者は「店舗スタッフから聞いてはいたが、やっぱり気にはなりますね。飲食店とかが多いのにもったいない」。別の店のスタッフは「においが少し気になるのは事実なので、その点は東急さんに話をしている」と明かす。

においの発生については、環境整備事業を実施した東急や渋谷区も把握しており、改善したいとの意思を示す。ただ、「何かやっていければと思っているが、当社だけでは何もできないのは事実」(東急)。渋谷区都市整備部渋谷駅周辺整備課の担当者も「臭気は川の問題かどうかわからない部分もある」と前置きしたうえで、「区でも考えていきたいが、なかなか『川の中』については手を入れられないのが現状」と話す。

区によると、渋谷川は東京都が管理する河川だが、都の事務処理の特例に関する条例によって、清掃や占用申請許可などといった日常的な管理の権限については区に委譲されている。だが、河川自体に関する改修工事などは都の管理だという。今回の環境整備事業では、遊歩道から川が見えやすいように一部の護岸を傾斜の緩やかな「緩傾斜護岸」としたが、これも東京都の事業として行われた。

民間企業の東急だけでなく、区も「川そのもの」に手をつけるのは難しい事情があるのだ。

川の上流には下水道

そもそも「におい」の原因は何なのか。東京都建設局河川部計画課の担当者は「渋谷川のこの区間(渋谷ストリーム付近)はこれまで水の流れがほとんどなかったため、増水時に上流でつながる下水道から流れてくる水のにおいが留まってしまったためではないか」との見方を示す。

川の上流は暗渠になっている(記者撮影)

渋谷川はもともと新宿御苑を水源とする川だったが、現在は渋谷ストリーム付近より上流部がすべて暗渠となり、下水道の幹線として使われている。東京都下水道局計画調整部によると、渋谷川の上流にあたる下水道は宮下公園付近で分岐しており、通常は渋谷川方面に下水が流れることはないが、雨などで一定の水量を超えると渋谷川方面にも水が流れ込む仕組みになっている。

下水道局によると、都区部の下水道は生活排水などの汚水と雨水を1本の下水管に流す「合流式下水道」のため、雨で増水した場合に川へ流れる水は雨水がほとんどとはいえ、汚水が混じった水となる。汚水中のゴミなどは川に流れ込まないよう「水面制御装置」と呼ばれる装置で除去して水再生センター(下水処理施設)に送り込まれるが、「においについてはどうしても若干出てしまう」(同局計画調整部)という。

この水が通常は水流のほとんどない場所に流れ込むことで、においが残ってしまったのではないかというわけだ。

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