自民総裁選初の討論会、安倍首相が陳謝 公文書問題「行政不信を招いた」
[東京 14日 ロイター] - 自民党総裁選で初の公開討論会が14日午前は日本記者クラブ、午後は自民党の青年局などの主催で開かれた。安倍晋三首相は国土強じん化のための財政出動や早期の憲法改正を訴えた。石破茂元幹事長は地方創生や個人所得の引き上げについて激論を交わした。首相はアベノミクスの核心である異次元の金融緩和について「いつまでも続けてよいとは思わない」と述べ、任期中の出口方向への転換に期待を示した。
<ライフラインを緊急点検━首相>
20日投開票が行われる総裁選は7日告示されたが、北海道胆振東部地震が発生したため選挙活動は9日まで自粛され、10━13日に首相がロシアを訪問していたため、討論会も当初の8日の開催予定が延期されていた。
憲法改正を巡っては、首相が「戦後70年一度も行えなかった憲法改正に挑戦し、日本の新しい時代を切り開いていく」との決意を述べた。石破氏も「憲法改正は(自民党の)党是だ」「戦争の惨禍を経験した世代が存命な間に実施したい」と明言したものの、「スケジュール観ありきでやるべきとは思わない」との持論を繰り返し、首相は「なぜ今急ぐのか、というのは、やるな、と言うのと同じこと」と反論した。
首相は5年9カ月の経済実績を強調し、「国難とも呼ぶべき少子高齢化に真正面から立ち向かう」などと強調した。台風による関西空港閉鎖や地震による停電など相次ぐ災害を受けて交通・電力など「ライフラインの緊急点検を実施する」と述べ、国土強じん化の緊急対策を3年間で集中実施、「そのため思い切った予算を取っていく」と強調した。
石破氏は、大企業の収益が改善する一方、労働分配率が低下しており、アベノミクスの果実が地方・個人に十分届いていないと指摘。「大切なのは物価上昇でなく所得増だ」と指摘し、「10年間で個人所得を3─5割伸ばしていく」との方針を示した。
<異次元緩和「ずっと続けてよいと思わない」━首相>
政府・日銀が掲げている2%の物価目標について、安倍首相は「目的は実体経済・雇用をよくすること」だと述べ、現状については「デフレでない状況を実現した」としながら、異次元の金融緩和は「ずっと続けてよいとは思わない」との見解を示した。
また異次元緩和からの出口にたどり着けるかとの質問に対して「私の任期のうちにやり遂げたい」としつつ、今後の金融政策運営は「黒田東彦総裁に任せている」とした。
2019年10月に予定されている消費税引き上げについて、首相は「予定通り実施したい」と述べ、「大きな反動減につながらないよう自動車などの耐久財などに対応を考える」と強調した。石破氏も「消費税を上げて社会保障の水準を下げるようなことは考えない。消費税を上げてもやっていける経済をつくる。一人ひとりの幸せを実現する社会保障の仕組みを早急に作る」とした。
安倍首相は森友・加計問題を念頭に「行政への不信を招いてしまった。改めておわびする」と陳謝。森友問題について「贈収賄事件ではない」と主張した。一方、石破氏は「それは当たり前で(国有地値引きを巡る)因果関係が問題」と反論した。
<拉致被害者「生存前提の交渉当たり前」━首相>
ロシアのプーチン大統領が12日、首相らの面前で年内の平和条約締結を提唱し、領土問題の後回しを主張した点について首相は「平和条約への意欲が示されたのは間違いない」と指摘し、「11、12月の日ロ首脳会談が重要」と述べた。日ロ関係については「領土問題を解決し、平和条約を締結するため日ロ交渉を進める」と改めて従来方針を強調した。
拉致問題について、北朝鮮側が被害者の一部は死亡していると主張している点について、首相は日本政府として「確認できておらず、生存を前提に交渉するのが当たり前」と主張した。
外国人材の活用について、首相は「地方で活用し(人手不足が)成長の阻害にならないようにする」と述べた。石破氏も「労働力不足だからとの短絡的発想でなく、日本の生産性を上げるため積極的に活用を図る」と述べ、両候補とも前向きな姿勢を示した。
*内容を追加しました。
(竹本能文)
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