北朝鮮に接近する「ロシア正教会」の思惑 金正恩氏を平壌の聖堂に招待
「ロシア正教会としては、信者同士の交流など、二国間関係を人道面から発展させ、強化する用意がある」(キリル総主教)
総主教はさらに北朝鮮がハバロフスク神学校に留学生を派遣し、最近4人が同神学校で学んだことに触れ、ロシア正教会に対する北朝鮮の協力を持ち上げた。
「北朝鮮で正教会の聖職者が誕生したことによって、同地の信者の要望は満たされるであろう」と総主教は述べた。
現在、ロシア正教会最高位にあるキリル総主教は、2006年にスモレンスク・カリーニングラード府主教として平壌を訪問。北朝鮮における初のロシア正教会聖堂「聖三位一体聖堂」の落成を祝った。
北朝鮮は「信教の自由は守られている」と主張
ロシア正教会の対外関係部門によると、平壌南部にある聖三位一体聖堂は北朝鮮の前最高指導者、金正日(キム・ジョンイル)氏による2002年のモスクワ訪問をきっかけに建設が決定。ロシア正教会がこれを支援した。
金正日氏はモスクワで目にしたロシア正教会の聖堂が気に入り、北朝鮮にも聖堂を「建設したいと希望した」もようだ。
しかし、聖三位一体聖堂は北朝鮮国民ではなく、もっぱらロシア人によって利用されてきた。駐北朝鮮ロシア大使館の職員が、その代表だ。北朝鮮は憲法で信教の自由をうたってはいるが、現実には国民がこのような権利を行使することはできない。
アメリカ国際宗教自由委員会(USCIRF)が2018年に公表した報告書によれば、北朝鮮は「国営の礼拝施設に対して絶対的な影響力を持ち、信教の自由があるかのように装っている」。
USCIRFは北朝鮮を「特に懸念すべき国」の中でも特に注意を要する国に分類。「北朝鮮政府は信教の自由に対して、世界で最も敵対的かつ抑圧的なスタンスをとって」おり、「信教の自由は北朝鮮には存在しない」と述べている。
北朝鮮はこうした批判を真っ向から否定し、信教の自由は「法によって完全に保障されている」と主張し続けている。USCIRFの報告書によると、北朝鮮には前述のロシア正教会聖堂のほか、プロテスタント教会が3つ、カトリック教会が1つの合計5つの教会が存在し、すべてが国営であることがわかっている。
2012年には平壌にイスラム教のモスクも造られたが、これは駐北朝鮮イラン大使館の構内にある。
(文:コリン・ズワーコ)
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