「満員電車」あと何本増発すれば緩和できる? 東海道線や中央線、東西線…主要路線を検証

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多数の列車が走る朝の京王線。一部の駅では列車の詰まりを防ぐための工夫も見られる(写真:tarousite / PIXTA)

また、京王は現在、笹塚―仙川間の高架化事業を進めている。この際、明大前駅と千歳烏山駅は線路を4線に増やす計画だ。これが実現すると笹塚―つつじヶ丘間は急行等の追い抜きがない駅と追い抜きが可能な駅が交互に配置されるようになる。実はこのような設計にすると、複線で走らせられる本数の限界を大幅に引き上げられる可能性がある。

たとえば道路の場合、信号も踏切もなければ片側1車線につき1時間で普通乗用車が最大2000台走行できるとされるが、踏切があると一時停止が必要なため、1度も列車が来なかったとしても1時間に1000台まで走行可能台数が減ってしまうと言われている。そのため高速道路では、容量の低下を防ぐために停車や超低速での通過が多い料金所部分の車線数を手厚くしている。これによって本来の容量である1時間2000台を維持しているわけである。

京王の考え方もこれと似ており、急行停車駅、つまり朝の時間帯にすべての列車が停まる駅の線路を増やすことにしている。

実は、前述の「急行等の追い抜きがない駅と追い抜きが可能な駅を交互に配置」し、「急行停車駅は線路の数が多くなる駅のみ」としたうえで「本線に急行を入れる待避パターンと待避線に急行を入れる待避パターンを交互に繰り返す」「急行系列車と各駅停車を交互に運転する」という4点をセットで行うと、理論上は複線のままで1時間に最大40本の運転が可能になる。こうすると混雑率は113%まで下がり、かなり快適な通勤が実現することは間違いないだろう。さて、はたしてこのようなダイヤが実現するか。

120%達成はなかなか大変だ

ここまで、首都圏の主要通勤路線での混雑緩和にはあとどれくらいの輸送力が必要なのか、その輸送力を確保するにはどのようなハードルがあり、どこまでは実現できそうかを見てきた。

それぞれの路線・区間によって事情や考えられる対策は異なるが、ほとんどは複々線化などの大規模な投資をしないと120%レベルでも達成は難しそうである。国交省が掲げる150%でも苦しい路線もある。そんな中、もしかしたら上記の例のように、複線では1時間最大30本台前半が限界という壁を乗り越えて、複線のままで大増発が実現する路線があるかもしれない。

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