「カメラを止めるな!」盗作騒動の法的な論点 大ヒット映画にかけられた著作権侵害疑惑
今回、クレジット表記をめぐっては、「原案」か「原作」なのかが争点になっているようです。どちらも正確な法律用語ではないものの、実務上は、あくまでアイデアにとどまるものを「原案」、オリジナルとなっている著作物を「原作」と、それぞれ呼称するのが通常です。
ある作品(原作)に依拠して、本質的な特徴を維持しつつ、別の作品を創作することを、著作権法では「翻案」といいます。たとえば、漫画の原作を元に映画を作る場合などがこれにあてはまります。この場合には、元となる原作(「原著作物」といいます)の作者は、派生的な作品(「二次的著作物」といいます)に対しても、著作権を有しています。
もっとも実務上は、権利関係をシンプルにするために、原著作物の権利者から二次的著作物に関する著作権を買い取るかたちで契約を締結します。こうすることで、たとえば漫画原作の映画のDVD化や地上波放送やインターネットでの配信といったさらなる利用においてスムーズに行うことが可能となるのです。
演劇の場合、著作物として保護されるのは舞台そのものではなく、脚本ですので、本件では、『カメラを止めるな!』が『GHOST IN THE BOX!』の脚本の翻案といえるかどうか、そして翻案に当たる場合には、脚本の著作権者に許諾を得ていたのかが論点となります。
翻案であるかどうかの判断基準
それではある作品が別の作品の翻案であることについては、どのように判断するのでしょうか。2001年に出された「江差追分事件」という最高裁判決では、翻案権の侵害には以下の3つが必要であるとしています。
(1) ある作品Aが別の作品Bに依拠していること
(2) 作品Bが作品Aの表現上の特徴の同一性を直接感得できること
(3) 具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たな思想または感情を創作的に表現することにより、別の著作物を創作すること
(1)の別の作品に依拠しているかどうかというのは、つまり本件で言えば上田監督が『GHOST IN THE BOX!』を元にして『カメラを止めるな!』を作ったかどうかということです。
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