ホンダ「シビック」、日本復活から1年の通信簿 販売はまずまず、ただし先々には不安も
筆者は新型シビックが発表されたあと、ハッチバックとセダンそれぞれに試乗した。その時点でタイプRを試乗する機会はなかった。しかしながら、新型シビックは強い印象を残す商品性を備えていた。
開発責任者は、新型シビックの開発に際し、「開発の初期からタイプRを想定して開発してきた」と語った。
新型シビックのタイプRは、史上最強のパフォーマンスとうたわれるように、排気量2.0Lの直列4気筒ガソリンターボエンジンは320馬力の最高出力を発生する。ほかのハッチバックとセダンは排気量が1.5Lなので、比較しても意味はないが、それでも1.7倍以上の馬力のエンジンを積むタイプRを視野に開発された車体とサスペンションは、通常のハッチバックとセダンにも高度な操縦安定性をもたらした。
ハンドル操作に対し的確に進路を変え、山間の屈曲路で身軽に走り、壮快な運転を楽しませたのである。車両重量が1300kg台という軽さも効いているだろう。
エンジンは、ターボチャージャーの過給により強化されてはいるが、回転数が低いうちは1.5Lの排気量そのままの出力であり、低い回転でやや加速の物足りなさを覚えた。しかしターボチャージャーが機能して高回転まで回した際の伸びやかな加速は印象深い。タイプRでなくても、シビックはスポーティな運転を楽しませるクルマという特徴がはっきり表れていた。
車幅が1.8mあり、かなり大柄に見える新型シビックではあるが、4ドアセダンもクーペに見えるような外観にしており、シビックはハッチバックを基本とした快活なクルマという伝統がクルマ全体に示されている。7年ぶりの国内市場復活となりながら、それらシビックらしさという伝統を明確に受け継いだ姿や性能が、この1年の販売実績につながったのではないか。
電動化への道筋が見えない
一方で、新型シビックにハイブリッド車(HV)など電動化の車種設定はない。簡素にシビックの価値を強調したという意味で、現状の車種体系は評価されるべきだが、今日の環境情勢において、電動化への道筋が見えないことは、シビックの存在理由に先々の不安を残すのも事実である。
次期シビックは、一気に電気スポーティハッチバック車(EV)というくらいの飛躍が求められるかもしれない。競合他社の動向を見るのではなく、そうした大胆な挑戦こそ、ホンダファン、シビックファンの心をくすぐるのではないか。
とはいえ、実はゴルフは、ガソリンターボ車、ディーゼルターボ車、プラグインハイブリッド車、そして電気自動車と車種構成を整え、それらすべてゴルフという価値に揺るぎはないと胸を張る。シビックの次世代像は、すでに遅れぎみであると言えなくもない。
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