スズキで6400台発覚、「不正検査」続発の衝撃 マツダ、ヤマ発でも検査データ不正が相次ぐ

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マツダの菖蒲田清孝専務は「工場のオペレーションは日々改善をしているが、今回まだまだということに気づけた」と述べた(撮影:尾形文繁)

数も比率も最も多かったのがスズキだ。湖西工場、相良工場、磐田工場でそれぞれ抜き取り検査をした1万2819台のうち計6401台が不正検査だった。対象モデルは軽自動車「アルト」や小型車「スイフト」のほか、生産終了した車両も含めて、合計30車種に上る。中でも湖西工場は不正比率が7割を超えており、ほぼ常態化していた。

スズキの鈴木俊宏社長は「検査に詳しい管理職が工場に配置されていないため、日々の業務を管理できていなかった」と説明。作業手順を現場で作る必要があり、何か問題があった場合は現場のシフトあたり3人で判断しなければならない状況にあったという。さらにトレースエラー有りと判定した場合のデータの取り扱い、再試験の取り扱いについて決められたルールもなく、判定基準を正しく運用できていなかったという。

他方、マツダでは6カ月の研修を受けた15人の検査員が検査業務に従事していた。生産を担当する菖蒲田清孝専務は「検査員は自分たちが速度を守っているという意識が強かったため、逸脱に気がつかなかったことにショックを受けている」とコメント。今後は速度逸脱した場合は強制的に無効とする設備を導入する。

釈然としなかった3社の回答

ヤマハ発動機の渡部克明副社長は「悪いことをしている認識がなかった。われわれのプロセスが欠陥を持っていた」と述べた。ごくわずかな時間でも速度逸脱があれば、トレースエラーとなってしまうため、人間がすべてのエラーを把握するのは難しい。今後はマツダと同様の設備導入を検討する。

ヤマハ発動機の渡部克明副社長は「われわれのプロセスに欠陥があった」と語った(撮影:風間仁一郎)

2016年には三菱自動車とスズキが燃費データ測定で不正が発覚。2017年以降も日産を端緒にルール違反が相次いでいる。石井啓一国交相は同日、「車両の性能やメーカーの品質管理体制に対する不安を与えかねない事態で極めて遺憾だ」とするコメントを発表し、早急の再発防止策を求めた。省令も改正して、測定結果を保存するとともに、不正に書き換えられないようにするなどの措置を取る方針だ。

ただ、「そもそも何でこういうことになったのか」との質問に、3社とも明確な答えを示すことはなかった。今回の3社は日産、スバルと違って検査データの不正な書き換えである改ざんについてはいずれもなかったと強調したが、結果として法令遵守の意識が希薄だったと言わざるを得ない。次世代車の競争が激しい自動車業界だが、ルールを守るという基本の基本に立ち返るべきではないか。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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