鎌倉山の老舗会席「らい亭」復活劇の舞台裏

年間来客数が1万人以上も増加したワケ

一方で、旅(観光)に欠かせない「眺望」「料理」「体験」という3つの要素のうち、四季折々の花が咲く庭園から富士山・箱根連山・相模湾を見渡せる唯一無二な「眺望」と、自家製そばや地元の食材を取り入れた「料理」はある。

あとは、「体験」の部分を強化すればお客様の満足度が飛躍的に向上すると考え、体験重視のビジネス、イベントを積極的に取り入れることにした。

鎌倉山ならではの体験

まず、ブライダルサロンと提携しての写真撮影は、らい亭の環境をフルに生かした体験型ビジネスといえよう。最近は小さな結婚式を挙げる「地味婚」どころか、結婚式自体を挙げない「ナシ婚」カップルが増えている。「結婚式は挙げないが写真だけは撮りたい」、または「家族との食事と写真撮影だけはしたい」というナシ婚カップルが多く、こうした需要とらい亭の環境はとても相性がいいのだ。

ブライダル写真の撮影とらい亭は相性がいい。庭園内の竹林は人気撮影スポットだ(写真:らい亭)

たとえばジューンブライドの時期であれば鎌倉はアジサイが人気だが、アジサイの名所として知られる寺院は大混雑している。一方で、らい亭であれば2人だけで場所を独占して写真撮影できる。また、一般に写真撮影する場合は場所代を取ることが多いが、らい亭では会席料理を食べれば場所代は取らず、その点も喜ばれているという。

このブライダル写真の撮影は、リピーターの獲得にもつながる可能性が大きい。岩村さんは「常連のお客様のお話をうかがうと、若い頃のらい亭での思い出を話してくださる方が多い。思い出に残ることが、リピートしてくださったり、年を取ってから再び通っていただける理由になっているようです」という。ブライダル写真の撮影場所は、これ以上ない思い出の場所として心に刻まれることだろう。

また、同じく思い出づくりという意味で大きいのが、鎌倉市内に本社を置く湘南モノレールのイベントに協力する形で参加している子ども向けの「おしごと体験」だ。同イベントは湘南モノレールが主催し、駅員や乗務員の仕事が体験できるのがメインだが、夏休みは地元のいくつかの企業や団体も参加し、親子でのよい思い出づくりができると評判だ。ちなみに、らい亭ではそば処の配膳係を体験できる。

そば処の人気メニュー「そば定食」2700円(筆者撮影)

なお、収益改善に大きく貢献したビジネスとしては「鎌倉山ビアガーデン」がある。

上述の通り、甘味処の露庵は半ば開店休業状態となっていたため土日のみの営業とし、特に来客者の少ない夏季は、鎌倉山の緑に囲まれたビアガーデンとして営業することにした。

ビアガーデンを始めることが決まったのは2016年の4月だが、このときは前職で企業の新商品発表会の司会などをやっていた経験が生きた。「鎌倉市の広報メディアセンターに所属している会社と、買ってきた旅行・グルメ雑誌の編集部の連絡先をリストアップし、プレスリリースをお送りしました。一般的にうちのような小規模な飲食店ではプレス発表会などやらないという意見もありましたが、大手新聞社もきちんと対応してくださり、記事化していただけました」という。

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