自治体が行う「外国人マーケティング」の盲点 爆買いするイタリア人、座禅をする中国人

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もう1つインバウンドのターゲットを考えるときに注意すべきは、データの使い方です。外国人の中で「どこの国=○○人」をターゲットにするかを検討しようとすると、観光庁やJNTO(国際観光振興機構)が出しているデータを参考にします。

たとえば、図のように、日本に来ている外国人旅行者の「国別の訪日人数」は台湾・中国・韓国・香港が圧倒的に多いというデータはニュースなどでもよく取り上げられています。また「都道府県別の宿泊データ」をみると、広島をのぞく日本のすべての都道府県では、訪日外国人の上位を台湾・中国・韓国が占めているというデータもあります。

出所:日本政府観光局、各国・地域別の内訳(2017年)

その結果、「台湾」をターゲットにインバウンド施策を考える地方自治体や企業が多くなっています。もし地方自治体のインバウンド担当者がこの記事を読まれていたら、うちも同じだと思うかもしれません。われわれがリサーチした範囲ですが、「47のうち46の都道府県が台湾をターゲット市場にしている」という結果も出ました。

データの落とし穴

たしかに台湾からの訪日旅行客は年々増えています。また、親日家の人やリピーターが多いので、地方が台湾人をターゲットにしてプロモーションをするというのは合理的に見えます。

しかし、みんなで台湾をターゲットにプロモーションを展開することが、自治体間の競争を激しくしてしまっています。実際、私が台湾のメディアや旅行会社と仕事をする際にも、「最近は本当にたくさんの自治体や企業からタイアップの依頼がくる、だからこちらもタイアップの価格を上げている」「これまでは旅行商品を企画する責任者を日本に視察に行かせていたが、あまりにたくさんの地方からオファーがくるので、最近では(そこまで経験のない)若手も送り込んでいる」といった実情を聞くことがあります。

これらは「いま多く来ている人は○○人か」というざっくりした視点で見てしまうので起きる現象です。こちらは「データの落とし穴」と言ってもよいかもしれません。

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