資生堂、インバウンド熱狂の渦に見えた死角 スキンケア品に次ぐ「収益柱」を育成できるか

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中国ではスキンケア製品のシェアで2位に食い込む資生堂だが、メークアップ製品では5位以内に入れていない。実際、資生堂の魚谷雅彦社長は3月に行われた中期経営計画の発表会で「今伸びているのは圧倒的にスキンケアで、メークアップはまだ弱い」と述べている。

このまま手をこまぬいているわけにもいかない。そこで資生堂は今下期からメークアップ品の強化を図る。9月1日には資生堂の名を冠した「SHISEIDO」ブランドから、メークアップ製品(全15品目、124種類と用具6種)を世界各国で順次発売する。価格は1000~4800円という設定だ。

メークアップ強化に向けた課題

資生堂では2016年以降、各カテゴリーの開発拠点を世界各地に分散させている。たとえばフレグランスはフランス、スキンケアは日本といった具合だ。メークアップの場合は、アメリカのニューヨークに拠点を設ける。「アメリカはメークアップの世界最大の市場。ニューヨークの人材を中心に世界のメークアップ市場を分析し、商品開発などを主導してもらっている」(魚谷社長)。

9月1日から発売される「SHISEIDO」の新メークアップ製品。伊勢丹新宿本店と阪急うめだ本店では8月中・下旬より先行販売される(記者撮影)

今回発売するメークアップ製品はニューヨークが主導となって開発した第1弾商品。パッケージには日本のクリエイターが参画するほか、メークアップブラシには日本の熊野筆の伝統職人の技術を用いるなど、日本の技術を組み合わせるといった工夫もする。

満を持して、プレステージブランドのメークアップ製品を投入する資生堂。だがメークアップ強化には、越えなければいけない壁も存在する。スキンケア製品に比べるとメークアップ製品は種類も豊富で、個人によって趣向が分かれる。そのため万人受けするのは容易ではない。当然、現地のニーズにあったラインナップの強化などが必要になってくる。

そこでカギを握るのが、インフルエンサーとの連携といったマーケティングだ。スキンケア製品よりも、個性が出やすく変化がハッキリと目に見えるメークアップ製品の方がSNSとの相性もいい。文化や習慣も異なる中国で受け入れられるには、こうした取り組みが重要となるだろう。

スキンケア製品ではメード・イン・ジャパン旋風を巻き起こした資生堂。メークアップ製品でも波に乗ることはできるのか。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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