大塚家具、再浮上に欠かせない「人心」の重み 従業員の待遇悪化が影を落としている

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ただし、本社部門の人員増加の前向きな理由として1点考えられることに、大塚家具がインターネットを通じて家具を販売するEC事業を開始したことが挙げられます。おそらく、本社所属の従業員の内数にはEC事業担当者も含まれていると考えられます。

2017年のEC事業部門の売上は2.34億円であり、同社事業計画によると、2018年は5億円と、2倍以上の伸びを見込んでいるということです。

本社所属の従業員のうち、何名がEC事業に携わっているかの詳細はわかりませんが、EC事業は実店舗より少ないコストで売り上げを立てることができるはずですので、今後EC事業が大塚家具の業績にどのような影響を与えるのかを見守りたいところです。

従業員持株会の急激な縮小

最後の問題点は従業員持株会の急激な縮小です。

従業員持株会は2013年12月期に52万2000株を保有していましたが、2017年12月期には同28万6000株と半分近く減っています。

従業員の退職が主な理由だと推測されますが、従業員数の減少割合よりも持株会の縮小割合がはるかに大きいことが気がかりです。社歴の長い従業員が退職していることや、それに加え、退職はせずとも会社の先行きに不安を感じ持株会を脱退している従業員が増えている可能性がありそうです。

持株会を含む長期スパンでの株式投資は、株価の低迷期に我慢したり追加投資を行ったりすることで次の業績回復時に大きなリターンを得られるというのが醍醐味ですが、株価の低迷期に損失覚悟で従業員が自社株を現金化したほうが良いと考えているのかもしれません。

逆に、今後従業員持株会の持株数や持株比率が反転上昇することがあれば、会社と従業員の信頼関係が回復したと推察することができますので、持株会の動向は見守っていくべき指標の1つと言えるでしょう。

大塚家具にとっては資金面をはじめとする支援先を見つけるのはもちろん大事ですが、同時に、従業員の心をつかむための手を打つことも、再浮上のきっかけをつかむためには欠かせないことでしょう。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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