過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」 直島が現代アートの聖地になった軌跡とは?

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私が秋元氏と知己を得たのは、彼が金沢21世紀現代美術館の館長に就任して間もない頃だが、その時の印象が、現代アートという悪く言えばスノッブな感じとは真逆の、自然体で飾り気のない人物だったので、今でもよく覚えている。

アートに関する本としては異例だが、本書には写真も図も一切出てこない。ただ、文章だけでもその場の臨場感と秋元氏の現代アートに対する熱い想いが十分伝わってくる。

そうした秋元氏の一途な人柄と熱い想いがあって初めて、直島のプロジェクトは成功することができたのだと思う。

起業家精神と現代アートの親和性

昨年、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長が、ジャン=ミシェル・バスキアの作品を123億円という高額で落札して話題になるなど、今や現代アートは第一線のビジネスマンから熱い視線を浴びている。

『直島誕生――過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

世界の超富裕層が新たな投資先としてアート市場に目を付け始めたという理由もあると思うが、起業家精神と現代アートの先進性、特に創造と破壊のプロセスとの親和性が高いことが大きな理由なのではないかと思う。

アントレプレナーシップ(起業家精神)が益々重要になるこれからの世界で、現代アートは一層盛り上がりを見せることだろう(この辺りの詳細については、『アート戦略 コンテンポラリーアート虎の巻』の書評の中に書いたので、参照して頂きたい)。

本書『直島誕生――過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』は、以前HONZで紹介した金沢21世紀現代美術館と金沢にまつわる秋元氏の前作『おどろきの金沢』と合わせて読むと、現代アートに対する理解がより一層深まると思う。

何はともあれ、まずは”Don’t think. Feel!”の気持ちで、できるだけ多くの人々に現代アートを体感してもらいたいと思う。

堀内 勉 多摩大学社会的投資研究所教授・副所長、HONZ

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ほりうち つとむ / Tsutomu Horiuchi

外資系証券を経て大手不動産会社でCFOも務めた人物。自ら資本主義の教養学公開講座を主催するほど経済・ファイナンス分野に明るい一方で、科学や芸術分野にも精通し、読書のストライクゾーンは幅広い。

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