「ああ言えば上祐」を作った記者が語るオウム 最後までわからなかった真実

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麻原彰晃死刑囚の死刑が執行され、東京拘置所前に集まった報道陣ら(撮影:西岡千史)

オウム真理教・元代表の麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(63)ら元幹部7人の死刑が執行された。1995年3月に地下鉄サリン事件が起きてから23年。多くの記者が事件の解明に取材を続けてきたなかで、事件直後に「ああ言えば、上祐」の言葉を生み出したジャーナリストの二木啓孝氏は、現在でもオウム事件には「残された謎が多い」と話す。その真意を聞いた。

当記事は、AERA dot.の提供記事です

──麻原死刑囚をはじめ、7人の死刑が執行されました。

死刑を執行すると法務大臣に質問が集中するので、国会開会中に実施されることは少ない。その点では、今日の死刑執行は予想外でした。

ただ、今年3月に東京拘置所からオウム事件の死刑囚5人が他の拘置所に移送されていたので、今国会の閉会後に執行されるだろうとは思っていました。国会会期が32日間の延長になったことが会期中の死刑執行に影響したのかもしれません。

オウム事件には残された謎が多い

──麻原死刑囚含め、7人の死刑が執行されたことでオウム事件は大きな区切りを迎えました。

死刑が執行されたことで一つの区切りとなりましたが、オウム事件には残された謎が多い。その最たるものが、「本当に麻原が事件を指揮・命令したのか」という点です。麻原は、自身の裁判では一度も被告人尋問を受けることはありませんでした。意味不明なことを口走り、それが「詐病」と認定されていたからです。

しかし、麻原が本当に詐病だったかは疑問が残ります。私は井上嘉浩死刑囚の裁判を傍聴していましたが、その時に麻原は意味不明なことを口走りはじめた。その頃から、麻原の言葉で事件の真相が語られることはなくなりました。

私の見た印象では、麻原は拘禁反応による精神障害で、本来であれば医療刑務所に一度移送して、治療をしてから裁判すべきでした。裁判は、刑罰を決めるだけではなく、歴史の記録でもあります。裁判所が「詐病」と認定したことで、結果としてオウム事件の真実が明らかにならないまま終わってしまいました。

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