20~30代が負う「日本型先送り」の甚大なツケ 人口構成を見れば火を見るよりも明らかだ

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こうして戦前世代の社会保障を支えてきた「団塊の世代」が65歳を超えて高齢者になったのは2013年のことです。今度は立場が変わって、彼らの世代が作ってきた問題が、彼らの子どもである「団塊ジュニア」を中心とする世代に「先送り」されることになったわけです。

2036~40年にくる限界点

ここで一度データを確認してみましょう。2016年における「団塊の世代+αの5年間の人口」(1947~1951年生まれ)はそれぞれ生まれた年ごとに次のようになります。

1947年:204万1000人
1948年:216万2000人
1949年:219万1000人
1950年:200万7000人
1951年:187万5000人

総数は1027万6000人です。なお団塊の世代の人数が非常に多いのは当時中絶が法律で認められていなかったことが原因で、1949年に優生保護法(当時)が改正されて中絶が認められるようになると急速にベビーブームは収束していきます。「団塊ジュニア世代+αの5年間の人口」もそれぞれ年ごとに見てみましょう。

1971年:193万8000人
1972年:199万1000人
1973年:202万8000人
1974年:199万4000人
1975年:188万9000人

総数は984万人と、団塊の世代とほぼ均衡が取れています。つまり団塊の世代は問題を先送りしても、かろうじて1:1でその問題を受け止めて吸収してくれる対象がいる世代ということができると思います。広い意味で「親が死ぬまでの面倒は子が見る」という理屈が社会レベルでも通じる世代です。

他方で団塊ジュニア世代以下には、それに匹敵する人口の塊がまったくありません。つまり団塊ジュニア世代が問題を先送りしても、その問題を1:1で受け止めきれる世代が存在しません。

『逃げられない世代――日本型「先送り」システムの限界』(新潮新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

したがって、団塊ジュニアが先送りした課題は全世代が均等に負担を上げて、つまり増税を受け入れて、吸収するしかありません。ただこのような担い手と受け手のバランスが取れない社会保障制度は、絶え間ない増税を招き必ず破綻をすることになるので、このような強引な先送り手法が通じるのはせいぜい一世代で、団塊ジュニア以降の世代はそもそも問題を先送りすることができない世代になっていくことが予測されます。年齢で言えば現在の20~30代の世代です。

あまり単純に考えすぎて精緻な議論ではありませんが、こう考えると、1つの目安として遅くとも団塊ジュニア世代が高齢者になる2036~40年には内政面で日本の先送り型政治システムの限界がくるものと思われます。

ここから団塊ジュニア世代が寿命を迎えるまでの20年間はついに日本社会が先送りしてきた課題から「逃げられなく」なり、社会保障制度に関して覆い隠してきたあらゆる問題が噴出し、社会変革が迫られる日本社会にとって本当の正念場になると思われます。このことは、近い将来日本の社会保障制度の変革は避けられないことを意味しています。

宇佐美 典也 エネルギーコンサルタント

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うさみ のりや / Noriya Usami

1981年、東京都生まれ。暁星高校、東京大学経済学部を経て、経済産業省に入省。企業立地促進政策、農商工連携政策、技術関連法制の見直しを担当したのち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)にて電機・IT分野の国家プロジェクトの立案およびマネジメントを担当。2012年9月に経済産業省を退職。現在、再生可能エネルギー分野や地域活性化分野のコンサルティングを展開している。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)、『肩書き捨てたら地獄だった - 挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方』(中公新書ラクレ) など。

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