金融庁のみずほ処分は軽度の公算 与野党追及が波乱要因に

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金融庁は9月27日、みずほ銀行に対し、銀行法に基づく業務改善命令を出した。ところが、その後に問題融資の情報が担当役員止まりだったとしていた金融庁に対するみずほの当初の報告が誤りで、実際には当時の頭取まで情報が上がっていたことを明らかになった。

このため金融庁による処分の前提が覆ったが、金融庁は「問題融資を放置していたという本質面に変わりはない」(同庁幹部)と受け止めており、報告内容の誤りが社内調査で明らかになった点も、自浄能力の面でプラスと評価している。今後、新しい事実が判明しなければ「悪質とまではいえず、厳しい追加処分は出しにくい」(金融庁幹部)とみている。

背景に検査忌避(きひ)や妨害があれば刑事罰に問われかねないが、第三者委の調査報告も「隠蔽(ぺい)の意図などは認められない」と、みずほ側の説明を追認した。短期の調査だったとはいえ、これを覆すような新事実が今後、判明するとは考えにくいとみられている。

とはいえ、金融庁への報告は「対応を誤れば刑事罰に問われかねず、極めて重みがある」(他行の法令遵守担当者)と、銀行界では理解されている。

麻生太郎財務・金融相も28日、みずほが金融庁に誤った報告したことについて「銀行として一番やってはいけない」と指摘した。従来の業務改善命令に加えて新たな改善命令を出すことや、関連部署に数日程度の一部業務停止命令を出し、徹底的な見直しを求める可能性は残る。

波乱要因になりそうなのが、国会での動きだ。みずほの対応や、事実と異なる報告を見抜けなかった金融庁の責任を追求する声が、与野党から挙がっている。

ただ、金融庁が過剰反応して必要以上に厳しい処分を出せば、行政の予測可能性が損なわれるおそれもある。政治の声が強まれば、金融庁は難しい判断を迫られる局面もありそうだ。

(平田 紀之 編集;田巻 一彦)

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