大阪地震、「鉄道情報」は万全ではなかった 公式HPはつながりにくく、ツイッター頼みに

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阪神淡路大震災のとき、地元の路線は震災により甚大な被害を受け、数カ月間に渡って運転見合わせの状態が続いた。当時、運行情報を知る手段は駅に貼られていた「お知らせ」を見ることだった。「お知らせ」には路線の運行情報だけでなく、代行輸送に関する情報も詳細に記載されていたように記憶している。

復旧状況が進むにつれ「お知らせ」は更新され、全線開通が近づくと、駅員が利用者に全線開通と新ダイヤを知らせるパンフレットを配り始めた。要するに、23年前の伝達手段はインターネットではなく、「お知らせ」の紙やパンフレットだった。今では考えられないほどアナログな情報だったが、鉄道会社が出している情報なので、全面的に信用できた。

運行情報はツイッター頼みでいいのか

今回の地震では、発生から3時間経った午前11時に筆者は最寄り駅(阪急岡本駅、JR摂津本山駅)を訪れた。まず、阪急岡本駅の改札前でビジネスパーソンを中心にスマートフォンを使って情報収集をしている姿を見かけた。駅員に運行情報や代行輸送について問い合わせる人もいたが、とても落ち着いたものだった。

次に阪急岡本駅から徒歩数分のところにあるJR摂津本山駅の改札前に向かった。こちらも、改札内にあるベンチは人で埋まっていたが、改札前ではあまり人を見かけなかった。インターネットの情報で電車が動いていないことがわかり、わざわざ駅を訪れる必要性もないということなのだろう。

大阪市内にある淀屋橋駅付近では、通勤客らが運行再開を待つ姿も(写真:ロイター)

では、インターネットでの情報提供はどのようなものだったか。前述のとおり、ホームページにアクセスできない鉄道会社が多く、ツイッターの公式アカウントで調べてみた。

公式アカウントを確認できたJR西日本と阪急電鉄、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道のうち、地震後に最も早く地図入りの運行情報をツイートしたのは阪急だった。8時55分時点の運行状況をツイートした。次に早かったのは10時43分時点の運行情報をツイートした阪神だった。

関西鉄道各社のインターネットによる情報提供は万全とはいえない。30分以内に地図入りの運行状況をツイートすれば、情報収集はもっとスムーズに進むのではないだろうか。

では、個人のツイッターはどうだろうか。さまざまな情報提供が行われているが、中には尼崎駅から新大阪駅までの徒歩移動を促すツイートがあった。余震の可能性がある中で、大規模な徒歩移動はリスクの高い行動と言わざるを得ない。

京阪の列車が脱線したという明らかにデマとわかるツイートもあった。悪意を持った第三者が嘘の運行情報を流し、現場が混乱する恐れは十分に考えられる。インターネットが発達した現代だからこそ、情報源には改めて気をつけたいものだ。

鉄道会社は緊急事態であっても、スムーズに運行情報のページを閲覧できるような工夫をしてほしい。首都圏の大手私鉄の多くが「運行情報」を冠した公式アカウントを持ち、運行情報を即時公開している。個人の悪意あるツイートに惑わされないためにも、このような取り組みは必要だろう。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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