30年痴漢をし続けた加害者が打ち明けた心情 痴漢常習者は、なぜ捕まってもやめないのか
ーー何度も捕まるなかで、勤務先の会社やご家族との関係は……。
最初の会社では、社内で「あの人は痴漢だ」という噂が出回わり、いづらくなってしまったんです。後輩からも「先輩、今日も痴漢してきたんですか?」と言われるようになってしまって。それ以降、痴漢で捕まるたびに会社は何度も替えています。
両親は、最初に逮捕されて、身元引受人が必要になったときに、私の痴漢のことを知りました。よく痴漢をする人は複雑な家庭環境にあったと言われますが、うちはいたって普通。その日の夜中、母のすすり泣く声がずっと聞こえていました。それでも痴漢をやめることはできなかったんですが……。
往復の通勤電車の中でほとんど毎日痴漢をしていました。朝は通勤ラッシュで満員電車ですし、夜も帰宅ラッシュの時間になると満員電車になる。帰りは乗った電車でできそうなら痴漢をして、降りるべき駅で降りずにそのまま痴漢し続けていました。そしてまた戻ってくる帰りの電車でも痴漢をして……。
朝は1〜2人ですけど、夜は5〜6人とかに痴漢をしていた。終電がなくなるまで往復したこともあれば、戻りの終電に乗れず、どこかに泊まって翌朝帰ってくることもありました。それから休みの日も痴漢をするために電車に乗っていました。30年も痴漢をしてきてしまったので、被害者は3万人はくだらないかもしれません。
一生懸命謝れば帰してくれた
ーー何度も捕まったということですが、それでもやめられなかった?
そもそも逮捕以前に、ある鉄道会社で捕まると鉄道警察に身柄を引き渡されるんですが、そこでは、一生懸命謝れば帰してくれるんです。実際に、私は何回も捕まっていますけど、土下座して謝って終わるか、始末書を書いて終わるかというケースも結構ありました。
被害者の訴えがよっぽどひどいときは、身元引受人が来ないと帰せないみたいなことを言われるんですが。実際に逮捕されて刑務所に入るまでに、そうしたケースは10回以上ありました。
ーーそして実際に逮捕されても痴漢をやめるきっかけにはならなかったと。
私の場合は罰金刑が3回、刑務所には2回行って合わせると2年近く入所していました。刑務所は、最低限のルールさえ守っていれば、毎日ご飯が食べられるし、仕事もそこそこ言われたことだけやっていればいい。会社だったら一生懸命やらないといけないじゃないですか。出来が悪いと怒られたり、納期に間に合わないと徹夜したり。
刑務所にいる間は、社会の中でどうやって生きていけばいいのかなんかも考えなくて済むので、ほとんど何のストレスもなかったです。服役している期間は痴漢をやめるための時間ではなく、出所までをただひたすら待つだけの時間でした。
ーー刑務所の更生プログラムも意味がなかったのでしょうか。
私がいたのはもう10年前のことなので、今はどうなっているかはわからないのですが、当時はほとんど機能してませんでした。そもそも私は最長でも11カ月の服役で、その程度の刑期だと性犯罪のプログラムの多くが対象外でしたから。それに自分の中では、痴漢はやめようとすればいつでもやめられると思っていたんです。30年痴漢をしてきて本当に何度も捕まりましたけど、それでもコントロールできると思っていて。