30年痴漢をし続けた加害者が打ち明けた心情 痴漢常習者は、なぜ捕まってもやめないのか
ただ最後に捕まったとき、泥酔していたんですが、車両内の女性に見境なく触っていたら腕を掴まれてハッと気づいたんです。そのときに、自分が何をしていたかさっぱりわからなかった。いや、痴漢をしていたんですけど、そのときの自分は何で掴まれたのかもわからないような状態で。もう、これは駄目だなと思ったんです。
ーーそれで、ようやく治療にもつながったと。
本当は最初の逮捕のときに性依存症のクリニックを紹介されて、3カ月ぐらいは毎日通っていました。ただ自分でどうにかなるだろうという気持ちもあり、「こちらは金を払っているんだから、医者なら治してみろ」という態度で、あまり治療に主体的じゃなかったんです。そうしたら、その後も何度も捕まってしまって……。
ここ10年ぐらいは痴漢をやめられている
最後の逮捕のときに、いよいよこれは本当に自分ではどうにもできないと思いました。そして治療を続けて、ここ10年ぐらいは痴漢をやめられています。やめられているというか、正確にはさまざまな工夫して痴漢をしないような状況に自分を置いているんですが。
ーーというのは?
これまでに、痴漢できるような状況のまま自分をコントロールしようとして、何度も失敗しているんです。だからもう、電車には乗らないことにしようと。そう決めてからは、移動は車かバス。それで一応、痴漢はしなくなりました。できなくなったというべきなのかもしれないですけど。治療の初期の頃は、自転車通勤にして、電車に乗るとしても満員電車を避けるなどしていたんですけど、やはり難しかった。もしかしたら、どこかに痴漢を許してくれる人がいるのかもしれないと思ってしまって……。
そうして10年が経ち、日常的に女性と接している中で、女性を見る目も変わってきました。本当に少しずつですが、「痴漢をしない自分」にも近づいているかもしれないとは思っています。
あの、たぶんこれを読んだ人の中には不快になる人もいると思うんですけど、なぜ自分は痴漢をしてしまっていたんだろうとか、どうしてやめられなかったんだろうと考えるんです。でも一人で考えていると、なかなかうまく言語化できない。だから、今回インタビューという形で話を聞いてもらうことで、自分がしてきたことと改めて向き合えればと思っています。
私は現在、精神保健福祉士の資格を取って元痴漢加害者の自分だからこそできる何かがあるのかもしれないんじゃないかと思っていて。うまく言葉にできないんですが、かつての私のように、何千とか何万もの被害を生む痴漢加害者が1人でも減れば、それだけ救われる人もいるんじゃないかと……。
リディラバジャーナルの関連記事
痴漢大国ニッポン:「社会問題」として考える痴漢
被害者が語る「痴漢に遭うこと」のリアル
痴漢は「謝れば済む」問題なのか
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら