トヨタ「エスティマ」発売12年でも健闘の理由 そこに唯一無二の存在感が生まれている

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2000年に登場した2代目エスティマは、エンジンを客室の前に搭載し、前輪駆動とするミニバンの基本形態で現れた。外観は初代の印象を崩さない上手なまとまり方をしていた。車体寸法は若干小さくなり、5ナンバー枠だったエミーナ/ルシーダはなくなった。5ナンバーミニバンとしては、翌2001年に「ノア」(前身は商用車タウンエースの乗用車版タウンエースノア)が生まれている。

2代目「エスティマ」は前輪駆動で登場した(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

2代目のエスティマは、V6エンジンと直列4気筒エンジンに加え、1年遅れでハイブリッド車を追加した。「プリウス」とは異なる方式のエスティマ専用ハイブリッドシステムを搭載するという資源の掛け方であった。いわゆる機械的な通常の変速機を持たない(遊星歯車による動力分割機構)プリウスと異なり、エスティマのハイブリッドはCVTを備えていた(THS‐C)。また4輪駆動とし、後輪は専用のモーターのみで駆動した(E‐Fourと呼んだ)。

トヨタ内で重要な位置づけにあったエスティマ

この時期、トヨタはハイブリッド車の車種構成を、方式を含めて模索しており、「クラウン」には36Vバッテリーを活用したマイルドハイブリッド(THS‐M)を2001年に採用していた。そうした試行錯誤のなかに2代目エスティマのハイブリッドもあったのである。のちにプリウス方式と同じに収束されていくが、試行錯誤の車種に選ばれた点においてもエスティマはトヨタ内で重要な位置づけにあったことがうかがえる。

同じ時期、日産には「プレサージュ」があり、ホンダにはミニバンブームを牽引する「オデッセイ」があったが、いずれも燃費への対応は驚くほど鈍かった。車体が大柄で燃費の悪化傾向となるミニバンにハイブリッドを加え、燃費向上を模索したトヨタは、環境問題に関心を持つ消費者に一目置かれたに違いない。

日産プレサージュは2代目までで2009年に生産を終えている。ホンダ・オデッセイは2003~2013年の3~4代目で車高を低くしたステーションワゴン風にし、走りの良いミニバンを訴えかけた。だが、はじめこそ人気を得たものの、ミニバンをあえて選ぶ理由を失わせた。そして2013年からの現行5代目で車高を本来の高さに戻した。

運転の楽しさがクルマの魅力の1つであることは間違いない。しかしミニバンがなぜ存在するのかという本質的な価値、同時にまた、時代の変化のなかで燃費に象徴される環境適合性を消費者が意識する時代に、日産もホンダもあまりにメーカー側の都合だけでミニバンをいじりすぎたのではないか。

エスティマは、愚直にミニバンの本質的な魅力を磨き上げていった。エスティマを中核として、5ナンバー枠のノア/ヴォクシー、上級のアルファード/ヴェルファイアという駒をトヨタはそろえ、それぞれのクラスでミニバンを魅力ある乗用車に仕立てていったのである。

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