二条城が「半世紀ぶりの集客」に成功したワケ これは「生産性向上」のモデルケースだ

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そのうえ、MICEのユニークベニューに開放したり、ウェディングやさまざまなレセプションやイベント(たとえば、サントリーとのコラボで京の伝統と食のイベント、松たか子さん出演の舞台公演、小澤征爾音楽塾など)に会場として使ってもらう計画も順次実現してきました。

財政逼迫でカネがないなら「自分で稼ぐ」しかない

このように二条城では、観光施設としての魅力度アップのためにさまざまな改革を実施してきました。その背景には、このような改革を実施してでも、入城者を増やし、何よりも収入を増やさなくてはいけなかったという事情があります。

日本にある文化財は、日本人すべての尊い財産であり、次の世代につなげていくべきものです。これら文化財の維持管理には当然ですが、おカネが大変かかります。今、日本は社会保障の負担がどんどん増え、いろいろな分野の予算が削られているという実態があります。文化財の維持管理に充てられる予算も潤沢にあるわけではないのです。

つまり、維持管理のための費用を、文化財自身が自ら稼ぎ出さなくてはいけない時代を迎えてしまっているのです。

こういう話をすると、「文化財とはそういう下世話なものではない」「文化財をビジネスに利用しようとするなんてとんでもない」などの反対意見や、批判の声をあげる人が必ず出てきます。実際、委員会でもそういう意見が出ることがありました。

しかしそういう人は、日本が直面している「予算の逼迫」という厳しい現実が理解できていないのです。過去の余裕があった時代が終わっていることがわからず、非現実的な理想論を振りかざしているだけだと思います。

文化財の魅力を高めて、増えた収入をその文化財そのものの保存のために利用する。これこそが文化財の魅力をアップさせ、稼げる施設にすることの目的です。

もちろん、実際におカネを負担するのは観光客です。だからこそ、観光客が納得しておカネを払うに値するだけの魅力付けや、相応の楽しみ方を提供する必要があるのです。

先ほども説明したように、二条城では歴史の勉強や、文化財の鑑賞だけではなく、京都ならではの食事の提供やイベントなどを開催し、より広い層に楽しんでもらえる仕組みを提供しています。そうすることにより、歴史や文化財にはそれほど興味のない人にも足を運んでもらったり、リピーターになってもらえるよう努めています。

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