二条城が「半世紀ぶりの集客」に成功したワケ これは「生産性向上」のモデルケースだ

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これは国の新しい方針にも沿ったものでした。単に日本語の解説を翻訳しただけでは、外国人には伝わりません。和文の参考資料をベースに、外国人が一から書き起こしたのです(これを「クリエーティブ・ライティング」と言います)。

2016(平成28)年12月1日に作られた日本語版を皮切りに、6種類の外国語版(英、繁、簡、ハングル、仏、西)が2017(平成29)年4月1日までに作られました。今年7月1日にはドイツ語も登場する予定なので、外国語版だけで7種類になります。

ほかにもさまざまな取り組みが行われた

北村氏の改革はただ単にパンフレットを作るだけにはとどまりませんでした。2017(平成29)年11月からは、日本語と英語による公式ガイドツアーを開始しました。いずれも90分で、二条城の魅力をより深く理解できる内容になっています。ちなみにお値段は、日本語のコースが1000円、英語は2000円です。

他にも、訪問者の利便性を高めるための対策も実施されました。二条城の城内はほとんど砂利が敷かれており歩きにくく、また、二の丸御殿には、ベビーカーやキャリーバッグが持ち込めません。そこで、従来からあったコインロッカーに加えて、2018年2月から入り口付近に手荷物預かり所を設置し、サービスを開始しました。ちなみに一個300円です。また、車いすにもやさしく歩きやすくするため、砂利道の改善も計画されています。

さらに、来城者が来やすいように昨年には開城時間も延長しました。通常は開城が8:45で17:00閉城なのですが、昨年は7~8月の2カ月は開城を7時に繰り上げ。今年は期間を延長して7月から9月まで開城時間を8時とし、さらに閉城時間を7~8月は19:00に延長することが決まっています。

また、「非公開の香雲亭で、綺麗な日本庭園を見ながら食べられる朝ごはん」として話題になった朝食サービスも始めました。これは通年のサービスではなく、去年は7月と8月のみの期間限定でした。京都の夏は、昼間は大変暑いのですが、朝は比較的涼しいという特徴を生かした企画です。

すばらしい庭を見ながら朝食をとるイベントは、予約をとるのが難しいほどの人気を博した(写真:京都市元離宮二条城事務所)

昨年は2カ月で2244食も売り上げ、予約が取れないほど大変な人気を博しました。好評を受け、今年は期間を7月から9月までに延長することが決まっています。6月から予約受付が開始され、多くの申込みが殺到していると聞いています。また、今年2月1日から3月2日までは、お昼に「早春の二の丸御膳」の提供も実施しました。

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