パナの完全復活を阻む「テスラ」と「中国」の壁 久々の好決算に影を落とす2つのリスク要因
「モデル3に、最先端の技術を一気に注ぎすぎた。もっと順を追ってやるべきだった」。テスラのCEO、イーロン・マスク氏は、4月に受けた現地テレビのインタビューで、反省の弁を述べた。
「モデル3」は、完全自動生産を目指したテスラ初の大衆車だ。2017年7月から量産を開始したものの、自動生産に苦戦。とくに、パナソニックも2000億円を負担した電池工場「ギガファクトリー」でテスラが担当する電池のパック化の工程で苦戦していた。当初2017年末に達成するはずだった週次生産台数5000台の計画は、2度も延期されている。
量産化で地獄を見ているテスラ
現在は、完全自動生産をあきらめて人の手を使い、24時間・週7日のフル稼働体制で、週次2000台超まで回復。5月2日に開催されたテスラの電話会議でマスク氏は、「2カ月以内に週次5000台を達成する」と宣言。今後は車体組立を行うフリーモント工場を6日間閉鎖することで生産ラインを刷新し、「3度目の正直」で計画を達成したい構えだ。
だが自動生産への莫大な投資によるキャッシュの流出により、2018年3月末時点での現預金額は2017年12月末時点に比べて7億ドル減の27億ドル(約3000億円)。さらに、2018年1~3月期の最終損益は7億0955万ドル(約760億円)と過去最大の赤字に沈んでいる。
テスラの苦戦は、パナソニックにも大きな打撃を与えている。2017年度の車載電池事業は、当初の計画に比べて売上高で約900億円、営業損益で約240億円のマイナス影響を受けた。
こうした状況を受けて津賀社長は、「量産は少し手こずっているようだが、若干の期ずれが起こっているだけで、何かが消えるという類の苦戦ではないだろう」との見方を示した。
一方で、「パナは少し余裕を持たせて計画を立てるが、テスラは最初から理想を追い求める点で異質な会社。その高い目標によってやる気を引き出し結果を出していく。呼吸を合わせながらついていくのは大変だが、一緒に頑張る」と、同社との提携に意欲を見せつつ、苦労もにじませた。
マスク氏は現在、北米に加えて中国でも単独出資での工場建設ももくろんでおり、電話会議の中では「近々、工場の立地を発表する」と言及。これを受けて津賀社長は「テスラが中国で一貫生産するならば、電池を供給する」と第2のギガファクトリー建設にも応じる姿勢を明らかにした。
だが、この立ち上げもすんなりいくとは限らない。「パナはどこまでテスラへの“お付き合い”を続けるつもりなのか」(電機業界に詳しい市場関係者)と憂う声も少なくない。
そして、第2の壁は、最大のEV市場である中国だ。中国では、2019年から新エネルギー車規制法(NEV法)を施行し、中国で販売する新車の10%をプラグイン・ハイブリッドやEVにすることを自動車メーカーに義務付ける予定だ。
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